UCC上島珈琲は9月25日、水素を熱源とする大型焙煎機を同社のレギュラーコーヒー製造における主力工場「UCC富士工場」に導入することを決定したと発表した。

「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」をパーパスに掲げるUCCグループは、コーヒーの新たな可能性を追求し、今までにないコーヒーの価値創造にチャレンジしているとする。また同社ではUCCサステナビリティ指針を制定し、“2040年までにカーボンニュートラルを実現”という目標に向けた取り組みを推進しており、その1つとして水素を熱源とするコーヒー焙煎の実現に挑戦しているとのことだ。

コーヒーの焙煎プロセスにおいて、その熱源としては一般的に天然ガスが使用されている。しかしUCCは、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素を熱源とする焙煎機、および水素バーナーの開発・実装を進めているという。またこの取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採択され、官民一体となって取り組んでいるものだとする。

UCCによると、2022年に開始されたこの取り組みは進展を続けており、同年および2023年の9月に開催された水素閣僚会議にて、水素を熱源として焙煎したコーヒーを提供したほか、2023年5月に開催されたG7広島サミット2023では、このコーヒーを各国メディアに提供した、パネルにて紹介を行ったという。

そして同社はこれらの実用化に向けた進展を受け、UCC富士工場に水素を熱源とする大型焙煎機の導入を決定。焙煎時における燃料由来の二酸化炭素排出量をゼロ(熱源が100%水素の場合)にできる一方で、都市ガスやLPGと水素を混合して使用可能なハイブリッドバーナーの利用により、さまざまな水素化ニーズにも対応できるとのこと。また、独自の味覚特徴が生じている可能性もあり、従来熱源による焙煎との味覚差について研究を進めているとする。

今回の導入における総事業費は約10億円で、運用開始は2025年4月を予定しているといい、製造能力を約6000t(年間)となる見込み。なおその生産で使用する水素については、山梨県よりグリーン水素を調達する予定だという。

UCCは、水素の熱源利用・カーボンニュートラルなコーヒー製造への挑戦を通じて、コーヒー産業に限らず、世界の食品産業の脱炭素化に貢献できるよう挑戦と前進を続けていくとしている。