ElevationSpace(エレベーションスペース)は、三井物産が実施者として選定された「民間主導の地球低軌道有人拠点事業における米国商業宇宙ステーション接続型日本モジュールの概念検討」事業に対してパートナー企業として参画し、高頻度サンプルリターンサービス事業の検討を行うことを発表した。

  • 三井物産とElevationSpaceのロゴ

    三井物産とElevationSpaceのロゴ(出所:ElevationSpace)

日本政府が2023年6月に発表した「宇宙基本計画」の中で、国際宇宙ステーション(ISS)が存在するような高度2000km以下の「地球低軌道」は、地球からアクセスしやすく物資の補給や回収が比較的容易であることから、宇宙環境利用の貴重な場と位置づけられており、アルテミス計画をはじめとした月以遠への活動にあたって必要となる技術の獲得や実証の場としても利用することが明言されている。

しかし、これまで基礎科学的な実験から産業利用まで幅広く利用されてきた国際宇宙ステーション(ISS)は、構造寿命などの関係から2030年の運用終了が予定されており、アメリカを中心に複数の民間企業がISSに代わる商業宇宙ステーションの計画を進めている。一方で、そうした商業宇宙ステーションが運用されたとしても、宇宙利用を行う場所が限定的になることが想定されているほか、宇宙環境で製品や技術の性能を試験する機会が限られているために民生技術の宇宙転用が進まないという課題があるという。

日本は、ISSの中で最大規模の実験モジュール「きぼう」を開発・運用しているが、ポストISSにおける地球低軌道活動にあたっては、これまでに培ってきた技術の維持・継承の実現性を担保しつつ、国として必要な技術実証・学術研究の場を確保し、費用対効果なども踏まえたうえで、総合的に検討を行うとした見方を示している。

そうした日本の立場に基づいて、将来の地球低軌道の活動の場として日本独自の環境構築を民間主導で検討するため、同事業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって公募が行われ、三井物産が事業者として選定され、パートナー企業と連携することで「きぼう」の後継機となる日本モジュールの保有・運用事業の事業化調査を行い、日本モジュールに必要な技術を有する新型宇宙ステーション補給機の一部改修開発をベースに事業化を検討する。

ElevationSpaceは宇宙で実証・実験を行ったあと、地球に帰還することのできる小型衛星の開発を進めており、その小型衛星を活用した宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」(イーエルエスアール)のスラスタ技術や大気圏再突入技術、回収カプセル技術に加え、JAXAとコンセプトレベルで検討を始めている地球低軌道拠点からの高頻度再突入・回収の技術を応用・活用し、同事業において高頻度サンプルリターンサービス事業の検討を行うとしている。

なお、同社は宇宙環境を利用した実験・実証の場をあらゆる方法で実現・提供することで、宇宙基本計画の中で民生技術の宇宙転用が進まない障壁として指摘されている「宇宙環境で性能を試験する機会が少ない」という現状を打開し、民間事業者などの更なる宇宙産業参入促進や、日本の宇宙産業力強化に貢献していきたいとしている。