TrendForceによると、中国のNAND専業メーカーであるYMTCは現在、スマートフォン(スマホ)とモジュールの両方の主要顧客からの需要の急増に直面しており、少なくとも2024年上半期までフル生産が続く状態で、PCとサーバメーカーが生産能力の大半を分け合い、一部をモジュールメーカーが占めると見られるという。なおYMTCは現在、米国商務省のエンティティリストに登録されており、米国製半導体製造装置の入手に厳しい制限がかけられているため、どのようなレベルのNANDメモリの製造が行われているのかの詳細は明らかにされていない。
Huaweiの5Gスマホが市場活性化の引き金に
現在、NANS市場は顧客がNANDサプライヤに供給量の増加を要望しても、サプライヤ各社ともに減産を進める方向で、増産の意向は示していないため、新たな生産能力を追加する余地はなく、顧客はこれまでよりも高い価格を受け入れることが求められる可能性がある。
一方でスマホ市場はHuaweiの新たな5Gスマホ「Mate 60 Pro」の発売を機に、市場に活性化の兆しがでてきており、AppleのiPhone 15シリーズの発売もあり、スマホのサプライチェーン全体に活力を与えることが期待されている。ただし、iPhone 15 Pro Maxについては、CMOSイメージセンサなどに関連した生産上のボトルネックに起因して出荷数が限られる可能性があり、全体としてiPhone 15シリーズの推定出荷台数は最大8000万台程度に留まる可能性があるともしている。
スマホ市場の需要復活が一時的な現象になるのか、長期トレンドになるのかはまだ見通せないが、TrendForceでは、確かなことは世界のスマホ出荷台数は成熟期に入り、新機能などがけん引する形での大幅な成長の機会は限られることになると指摘している。ただし、スマホのストレージ容量の増加トレンドは継続しており、このトレンドは既存のサプライチェーンに大きなチャンスをもたらすことになっているともしている。
なお、自動車やAIなど、NANDを活用する新たな市場が誕生してきているが、巨大なスマホ市場を置き換えるほどの分野はまだ出現していないことから、世界のハイテク業界のコンセンサスとして、経済の回復には少なくとも現段階では家電、特にスマホの需要増加が不可欠であるとTrendForceでは指摘しており、成長著しい自動車やAI分野であっても、スマホ市場を置き換えることは簡単ではないとの見方を示している。