マネーフォワードは9月21日、相続に関する課題解決を目指すサービス「マネーフォワード お金のバトンβ」の提供開始を発表し、都内で記者説明会を開催した。

  • 左からマネーフォワードホームカンパニー カンパニー執行役員 COOの木村友彦氏、同 事業開発部 副部長の佐藤慎吾氏

    左からマネーフォワードホームカンパニー カンパニー執行役員 COOの木村友彦氏、同 事業開発部 副部長の佐藤慎吾氏

新サービスは、相続に関する全般的な悩みや不安、課題について3つのデジタルツールで見える化し、対応が必要なタスクなどの情報整理をサポートするほか、生前からの相続準備(終活)にも活用を可能としている。

  • 「マネーフォワード お金のバトンβ」の概要

    「マネーフォワード お金のバトンβ」の概要

デジタルツールで見える化した状況をもとに、必要に応じて新サービスと提携するアクセス相続センターの相続専門の相談員目線から、課題解決に向けた適切なアドバイスを提供し、解決策も提案する。

マネーフォワードホームカンパニー カンパニー執行役員 COOの木村友彦氏は「これまで、マネーフォワード MEでお金の見える化や課題改善をサポートし、同サービスの資産形成アドバンスコースで将来に向けた資産形成をサポートしてきた。新サービスにより、体制な資産を未来につなぐサポートに範囲を広げる」と述べた。

  • 木村氏

    木村氏

3つのデジタルツールで“相続”を見える化

利用の流れとしては、Webサイト上でツールを活用して現状把握、情報整理を行い、その後は面談申込、面談日程の確定、面談の実施、提案の確認となる。なお、現状では無料のオンライン家計簿、資産管理ツール「マネーフォワード ME」とは連携していないが、将来的に連携の可能性も含めて検討していく。

  • 新サービスの利用の流れ

    新サービスの利用の流れ

新サービスについて、マネーフォワードホームカンパニー 事業開発部 副部長の佐藤慎吾氏は「ビジョンは『家族に残す資産(お金や情報)の活用において迷いのないソリューションを提供する』だ。ターゲットユーザーは将来の備えやリスクに気づいていない潜在層と、知識に自信がなく何をやれば良いのかわからない顕在層の2つのセグメントを想定しており、現在の状況を把握することで対策を明確にし、適切な方法を提供する」と説明した。

新サービスのデジタルツールは「やることリスト」「相続財産シミュレーション」「家族とお金のリスク診断」の3つに加え、マイページ機能を持つ。

ユーザー自身が資産を遺す場合や家族から資産を受け取る場合に発生する悩み、不安、課題に対して、被相続人・相続人のどちらの立場からでも利用できる。マネーフォワードIDを保有する人は、サービス上でログインすれば、ツールで提示された情報をマイページ上で保存できる。

やることリストは現在の悩みに当てはまる項目を選択することでリストが作成されることに加え、被相続人が亡くなった場合は命日を登録することで、以降発生する手続きの対応期限(目安)も見える化される。各タスクの完了ボタンを押すことで、対応が完了した日付も記録する。

  • やることリストの概要

    やることリストの概要

相続財産シミュレーションでは、自分にもしものことがあった際、資産は誰にいくら渡るのか、相続税は発生するのかを確認できるシミュレーションツール。

配偶者や子ども、両親、兄弟などの家族構成、そして現在の金融資産額や所有している不動産の想定売値、遺族が受け取る死亡保険金など、シミュレーターに入力された情報から、相続人の構成や相続割合、相続税発生の有無などを表示する。

  • 相続財産シミュレーションの概要

    相続財産シミュレーションの概要

家族とお金のリスク診断に関しては、自分と家族のお金について、相続に関する潜在的リスクを簡単に確認できる診断ツールとなる。

診断結果では、想定されるリスクとともに、その潜在的リスクを回避するためのやることリストも自動作成される。また、診断結果は家族との共有を可能としている。

  • 家族とお金のリスク診断の概要

    家族とお金のリスク診断の概要

マイページでは、3つのデジタルツールで整理・提示された情報が一元管理され、マイページ上から各情報にアクセスすることができる。実際に相談員に相談するには、マイページ上から予約、予約情報のチェック、相談履歴などを確認できる。

  • マイページの概要

    マイページの概要

利用料金はツールの利用と相談員への初回相談は無料となり、相談対応エリアはβ版のため東京都および大阪府(対応エリアは今後拡大予定、相談員への相談以外は居住エリア問わず利用できる)となる。

誰にでも起こり得るからこそ、新サービスで価値を提供

マネーフォワードが新サービスを提供する背景にはその人自身だけでなく、周囲にも関わることであると同時に、相続対象となる資産や発生する相続税、相続人同士の遺産分割協議など、お金にまつわる悩みや課題が発生しやすい領域でもあるからだという。

同社では、マネーフォワード MEの利用者にアンケート調査を実施しており、うち32.4%が「ネガティブに感じる」と回答し、理由として「相続を受ける側、相続をする側の手続きが複雑そう、面倒そうに感じる」(49.3%)が最も多く挙げられたという。

  • 約3割以上が相続についてネガティブに感じているという

    約3割以上が相続についてネガティブに感じているという

実際に相続が必要になった場合、遺族は被相続人が亡くなったことを認知した翌日から10カ月以内には相続税の申告を行う必要があるとともに、相続人同士の遺産分割協議が行われる場合があり、並行して進めていく手続きが数多く存在する。

こうした調査結果もふまえて、木村氏は「相続はお金持ちだけの問題だと考えがちだが、1000万円以下でも発生する可能性はあり、多い少ないで左右されず、誰にでも起こり得る問題。そのため、この領域にサービスを投入することにした。来年以降にも法制度の変化も待ち受けていることから、ユーザーに届ける価値の1つとして新サービスを提供する。ユーザーが形成した資産をトラブルなく次につなげるようなプロダクトにしたい」と力を込めていた。

一方、佐藤氏は「新サービスのビジョンを実現するために内部・外部環境をふまえたサービスの成長を実現する。多くの人に相続を考える機会となるようにツールや相談体験の改善を続け、相続を取り巻く社会的な変化に向けて新機能・体験を提供する。そして、既存の個人向けサービスとのシナジーを生む施策や仕組み作りを積極的に進めていく」と、今後の意気込みを語っていた。