キヤノンは、1970年に発売された複合機「NP-1100」ならびに1982年に発売されたパーソナル複写機「PC-10/20」が、国立科学博物館の「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に登録されたことを発表した。登録をうけ、9月12日に登録授与式が開催され登録証と記念盾が授与されたという。
未来技術遺産の選定基準は、日本の科学技術史資料のうち「科学技術の発達史上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの」や「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたもの」であり、登録制度は資料の保存と次世代への継承を目的として2008年より実施されている。
キヤノンの製品においては、2010年の半導体露光装置「FPA-141F」、2019年のフォーカルプレーンシャッター式カメラ「ハンザ・キヤノン」、2021年の一眼レフカメラ「AE-1」に続き4回目(計5件)の登録となった。
複写機は、帯電させた感光ドラムに光で画像を描き、そこに付着させたトナーを紙に転写・定着させることで複写を実現する仕組み。今回、未来技術遺産に登録された国産初の普通紙複写機である「NP-1100」は、複写機市場にて米ゼロックスが強い存在感を見せていた時代において、三層構造の感光ドラムで作像する独自の電子写真技術「NP(New Process)システム」を開発することで、感光ドラムに残ったトナーを除去するクリーニング・ブレードの導入を可能にするなど、革新的な技術を搭載した歴史的な製品だという。
一方のパーソナル複写機「PC-10/20」は、カートリッジ方式を採用し、複写機の主要構成要素である感光ドラム、一次帯電器、現像器、クリーナーをすべて小型カートリッジに格納することで小型化・軽量化を実現したほか、ユーザー自身がカートリッジを交換するという新たな使用方法を編み出すことで、サービススタッフによる訪問型の保守点検をほぼ不要にするなど、それまでの官公庁や大企業だけでなく個人商店やフリーランスで働く人々も複写機を所有できるようにした点が評価されたという。
なおキヤノンは、今回の未来技術遺産への登録を励みに、これからも幅広いユーザーの期待に応える製品を提供していきたいとしている。