日立製作所(日立)は9月20~21日の間、同社のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」を東京ビックサイト 会議棟で開催している。リアル開催は4年ぶりだ。

  • 「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」

    「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」

基調講演には執行役社長 兼 CEOの小島啓二氏が登壇。「日立がめざすイノベーションの未来 ~AI新時代の持続的経済成長~」と題し、デジタル分野の研究者であった同氏が、昨今話題になっている生成AI(人工知能)について初めて講演を行った。日立はAIなどの革新技術とどのように向き合いながら、持続的な経済成長を実現するのだろうか。

小島氏は冒頭、世界で初めて有人動力飛行を成功させたライト兄弟の功績を例に出した。子供の頃に父親からもらったヘリコプターの玩具に魅了され、「いつか大空を飛ぶ」という夢を追い続けたライト兄弟。彼らはさまざまな実験を繰り返し、何度も失敗しながら、1903年にライトフライヤー号で世界初の有人動力飛行を成功させた。

「ライト兄弟の功績のように、イノベーションは人間の意思から始まる。『行動』して新たな知を獲得し、その知を発展させる『情報』をとり、知を深化させる『科学』に取り組む。イノベーションはこれら3つの知恵の掛け算によって生まれるものである」と説明。

  • 日立製作所 執行役社長 兼 CEOの小島啓二氏

    日立製作所 執行役社長 兼 CEOの小島啓二氏

同氏は続けて、昨今の革新的なイノベーションとして生成AIを例に挙げた。「生成AIの登場は、IT活用の歴史を紀元前と紀元後に分けてしまうほどのインパクトがある。言論に基づいて考える力をうまくモデル化しており、人間の知的作業を強力に補助するものだ。また、これまで埋もれて活用できなかった情報にも光をあてることができるだろう」と持論を述べた。

日立は今後生成AIを積極的に活用し、自社のみならず顧客企業の潜在力を引き出していきたい考えだ。同講演では、生成AIを使った事業構想が紹介された。

例えば、鉄道会社が新しく路線を建設するケース。事業担当者が生成AIを組み込んだシステムに「住民の世代別・地域別に鉄道計画への要望をリスト化して」、「他国の路線導入の事例を一覧にして」といったことを指示して知的作業を効率化する。そしてAIが事前にシミュレーションした車両台数や運行時間をもとに事業計画を練っていく。

  • 生成AIを使った事業構想のイメージ

    生成AIを使った事業構想のイメージ

「生成AIは企業がもつ情報を整理し、圧倒的な速度と情報量でアイデアを提案してくれる。その上で、人間は今まで以上に責任をもって判断を下さなければならない。これから大きく社会が変わっていくだろう」(小島氏)