Snowflakeは9月8日、プライベートイベント「DATA CLOUD WORLD TOUR」を開催した。基調講演において、社長執行役員を務める東條英俊氏が国内のビジネスの状況について語った。
企業の生成AIに向けてNVIDIAと協業
東條氏は、昨今の生成AIとLLMの注目度の高まりから、Snowflakeと掛け合わせて使うことに期待が高まっていると述べた。そうした中、「スノーフレイクにデータを集めているユーザーにとっては、データガバナンスを担保した上で、アプリケーションを展開できる。これが、われわれの最大の差別化ポイント。なお、AI戦略の前にデータ戦略が必要であり、データ基盤を全社として持つことが大きなテーマ」と、東條氏は説明した。
AIに関する取り組みの一環として、今年6月に開催されたグローバルイベント「Snowflake Summit 2023」では、NVIDIAとの提携が発表された。
この提携の下、Snowflakeは、大規模言語モデル(LLM)開発用のNVIDIA NeMoプラットフォームとNVIDIA GPUをベースにしたアクセラレーテッドコンピューティングを利用し、Snowflakeアカウント内のデータを活用して、生成AIサービスのためのカスタムLLMを安全に作成することを実現する。
この発表に関連して、NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎 真孝氏が基調講演に登壇した。同氏は、スノーフレイクとの提携について、次のように語った。
「LLM、生成AIのモメンタムがギリギリのタイミングで日本にやってきた。今後、日本が世界に追い付いて追い抜く可能性があるのではないか。NDVIDAIはGPUコンピューティングを提供しており、ソフトウェアに力を入れている。生成AIのフレームワークであるNVIDIA NeMoをSnowflakeのコンテナに入れることで、スピードを上げた開発が可能になる。生成AIがDXのブレイクスルーになると考えている」
大崎氏の言葉を受けて、東條氏は「AIはこれまで届かない高度なテクノロジーというイメージがあったが、今、簡単に使える節目に来ていると思う。そして、SnowflakeにNVIDIA NeMoを搭載することで、新たな価値がもたらされるだろう」と述べ、大崎氏に提言を求めた。
大崎氏は、今後のAIの展望として、「これから、AIは企業に溶け込んでいき、企業からさまざまなLLMが生まれると思う。企業で生まれたAIが業務効率を上げ、製品として使われるようになる。さらには、競争力となり、ブランドになるだろう」と述べた。
グループ一丸となってデータコラボレーション構想を進めるKDDI
続いて、KDDI 執行役員常務 竹澤浩氏が、Snowflakeを活用した、KDDIグループのデータコラボレーション構想について紹介した。KDDIは今年5月にも、Snowflakeを導入して、顧客データ基盤、データクリーンルームを構築することで、データのサイロ化を解消するとともに、グループ横断でのデータも民主化を進めることを明らかにしている。
竹澤氏は、データコラボレーション構想により、「日本企業はファーストパーティデータを囲い込む傾向があるが、日本の企業のデータ利活用の幅を広げていきたい」という目標を語った。
KDDIのデータコラボレーション構想は、「データでつなぐ」「データを巡らせる」「データで生み出す」という3つのパートから構成されている。
「データでつなぐ」というフェーズでは、グループ会社のサイロを取り払い、規制を守った上でコラボレーションすることを目指す。ここに、Snowflakeを活用する。竹澤氏は、異業種との新たな取り組みとして、Abemaとデータクリーンルームの開発を進めていることを紹介し、「両社のニーズが合えばビジネスができるのではないか」との見方を示した。
「データを巡らせる」というフェーズでは、データセットを整備するなどして、法規制を順守しながらも、データを利用しやすい形で技術を実装する必要があると考えているという。「グループ会社でDXを推進しているアイレットやフライフィールとも連携して、データコラボレーションを実現していきたい」(竹澤氏)
さらに、竹澤氏は社内の生成AI活用の状況についても語った。同社では、今年5月に、全社の部門横断の体制を構築し、生成系AIの利活用を進めている。「全社にガバナンスをかけて、社内利用を進め、それからビジネスに活用する。今は、知見をためている段階」と同氏。
そして、長期的にはAI人材育成に取り組んでいく構えだ。KDDIは2020年度に「KDDI DX University」を設立し、グループ全体でDX人財を4000名規模に拡大する計画を表明している。AI人材もその一環として育成していくとしている。