近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめとするビジネスの変容に伴い、組織にとってテクノロジーの重要性が高まっている。新たなテクノロジーの実現に必要な、組織における技術戦略の策定や実行などの中心にいるのが、“最高技術責任者”(CTO)の存在だ。組織の技術的な側面全般を監督するCTOは、先進企業では事業分野を問わず不可欠となっている。今回は、その効果について見ていきたい。

(前編はこちら:CTOが求められる理由とは?(前編)~変容するCTOの役割~)

“潤滑油”としてのCTO

業界を問わず、CTOが持つ技術的専門知識は、しばしば組織内の“潤滑油”としての役割を果たす。例えば、ある組織が別組織と合併した際、組織内で使用するビジネスプラットフォームが各オフィスや各地域で異なる場合、CTOは組織内のオペレーションの効率化やサイバーセキュリティ面での安全性などを考慮して、プラットフォームの統合を提案し、1つの組織としての統合を強化することができる。

ただし、このような潤滑油としての機能をCTOが十分に発揮するには、CEOを含む組織の経営陣がCTOの価値を正しく理解していることが前提となる。経営陣がデジタル変革に対する理解やコミットメントを示さない場合、CTOの機能を限定することにつながってしまう。CTOが組織の変革に貢献できるかは、その組織の成長戦略とCEOの判断力に委ねられる部分が多いのである。

社内外のステークホルダーとの関わり

今日、市場を牽引する組織の多くは、CTOが営業部やマーケティング部などのさまざまな部署と足並みを揃え、技術ロードマップを策定し、顧客の需要と照らし合わせている。すなわち、CTOが顧客の需要を理解し、それを自社のビジネスに反映するためには、CTO自身が社内外のステークホルダーと連携することが必要なのだ。

例えば米国の大手LCC航空会社では、CTOが製品開発やデータサイエンスを担当し、デジタルコマースやベンチャーキャピタルを担当する最高デジタル責任者(CDO)と連携することで、イノベーションから顧客向けの導入までシームレスな移行を実現している。

優れたCTOであるためには、経営陣が目標としているビジネスを理解し、目標達成に必要とされる技術投資を提案しなければならない。また、技術が経営陣の中で正しく理解されていない場合には、何故その技術が重要となるのかを説明することが求められる。一方で、CTOは経営陣だけではなく、組織の技術開発に携わっている人々に対しても、新たに必要とされる技術やその仕組みについて伝える責任を負っている。

CTOが経営陣の一人として確実にビジネスに貢献するには、CTOの採用が“コスト”ではなく、価値ある“投資”であることを組織が認識しなければならない。またCTOの役割が、CDOや最高情報責任者(CIO)などと部分的に重複することもある中で、各ポジションの責任を明確にし、ステークホルダー間で連携することが必要である。

パンデミックにより加速したテクノロジーは、ビジネスの変革を促し、社会を大きく変えている。CTOの存在は、組織にとって何が必要となるかを見極め、的確な判断を行うことで、ビジネスを成功へと導く大きな役割を担っている。