富士通は9月19日、SAPの「RISE with SAP」のプレミアムサプライヤーとして、クラウドERPソリューション「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu(以下、RISE with SAP)」を「Fujitsu Uvance」の新オファリングとして提供開始すると発表し、記者説明会を開いた。

  • 記者説明会での一幕

    記者説明会での一幕

「RISE with SAP」は、クラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」を核にSAPの各種クラウドサービス、SAP S/4HANAへの移行ツールをパッケージとして提供するもの。インフラ基盤はSAPが運用するマネージドクラウドを前提としており、サービス提供形態にはパブリック型とプライベート型がある。

「Fujitsu Uvance」とは同社が掲げる事業ブランドであり、イノベーションを伴うサステナブルな世界の実現と、社会課題の解決を目指すソリューション群として展開している。社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野(Vertical Areas)と、これを支えるテクノロジー基盤(Horizontal Areas)3つの、計7分野を重点注力分野としている。

富士通はFujitsu Uvanceが持つ7分野の強みに対し、RISE with SAPのIPを組み合わせることで、付加価値の高いソリューションとしてグローバルへの展開を狙うとのことだ。特にブロックチェーンやコンピューティングをVertical Areasに展開する中で、そのインフラ部分にRISE with SAPを活用する。

  • Fujitsu UvanceとSAPの連携概要

    Fujitsu UvanceとSAPの連携概要

プレミアムサプライヤーは具体的には、インフラとSAP環境についてRISE with SAP S/4HANA Cloud, private editionをSAP社に代わり構築・運用を担当する。「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu」は2024年1月から国内での提供を開始し、同年中のなるべく早い時期にグローバルでも一部提供を開始する予定だ。2025年にはグローバル全体での本格展開を見込んでいる。

  • RISE with SAPの展開イメージ

    RISE with SAPの展開イメージ

なお、Vertical Areasの一つである「Sustainable Manufacturing」分野においては、すでにSAPのソリューションと連動したサービスを展開しているそうだ。

また、富士通は過去に川崎重工のSAP PEO(Production Engineering & Operation)ソリューションの導入を実施した経験を持つ。この際のノウハウをパッケージ化し、他社でも利用できるようSaaS(Software as a Service)として展開するという。

このように、富士通がこれまで実施してきたSAPの導入実績をサービス化することで、顧客支援を強化する方針だ。さらにSoE(System of Engagement)としてデータ連携機能も備え、複数社間の横のデータ連携も可能としていく構え。

  • 富士通とSAPが連携した事例

    富士通とSAPが連携した事例

富士通執行役員の高橋美波氏は、同社がプレミアムサプライヤーとして発揮できる価値として、「国内企業を知り尽くしたSAPコンサルタント」「ミッションクリティカルなシステムへの対応力」「グローバル規模のインテグレーションの知見」の3点を挙げた。

「当社が長年強みとしているミッションクリティカルシステムに対し、メインフレームからのモダナイゼーションをSAPと連携しながら協力に支援する。今後は2025年に向けて8000人規模のコンサルタントを配置していく」(高橋氏)

  • 富士通 執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ 高橋美波氏

    富士通 執行役員 SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ 高橋美波氏

富士通は2025年度までの売上目標について、2022年度の2000億円から5000億円増となる7000億円を打ち出している。増額分5000億円のうち1000億円がHorizontal領域で、その約30%をSAP事業で実現するという。なお、4000億円分の売上増加はvertical領域の成長を見込み、うち数百億円ほどがSAP事業によるものと想定している。

  • Fujitsu Uvanceの今後の展開

    Fujitsu Uvanceの今後の展開

説明会に参加したSAPのポールマリオット氏は「SAPにとって世界の中で最も急成長している地域であるアジア・日本は、富士通とSAPにとって非常に大きな市場である。両社のノウハウと経験を組み合わせて、お客様のビジネス変革を加速していきたい」と喜びの表情を見せた。

  • SAPアジア太平洋日本地域プレジデント ポールマリオット氏

    SAPアジア太平洋日本地域プレジデント ポールマリオット氏