千葉大学とエジプト国立天文・地球物理学研究所は、銀河団の質量と銀河団の数の関係について、銀河団を構成するメンバー銀河を利用して推定。数値シミュレーションによる予測値と比較した結果、宇宙に存在する物質とエネルギーの総量のうち物質が31%を占め、残りは暗黒エネルギーであることを突き止めたと発表した。

同成果は、千葉大学 情報戦略機構の石山智明准教授と、エジプト国立天文・地球物理学研究所のモハメド・アブドラ研究員、同 ジリアン・ウィルソン研究員、アナトリー・クリピン研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、2023年9月13日に米国の天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

宇宙論における最も重要な問題の1つとして、宇宙における各物質成分がどれくらいの割合で存在するかが挙げられる。それを推定する方法の1つに、銀河団の質量と数の関係を用いるものがあるが、ほとんどの物質は暗黒物質であり、望遠鏡を用いた光学的な直接観測ができないため、この関係を正確に直接測定することは困難だったという。 そこで、研究チームは今回、質量の大きい銀河団ほどより多くのメンバー銀河を含んでいるという事実に着目し、銀河団の質量を間接的に測定する方法を用いて研究を行ったとする。

銀河は光り輝く星で構成されているため、各銀河団に含まれるメンバー銀河の数の計測を、その銀河団の質量を間接的に測定する方法として利用できるという考え方のもと、研究チームはスローンデジタルスカイサーベイの観測データを解析、各銀河団に含まれるメンバー銀河の数を計測する形で銀河団の質量とメンバー銀河の数の関係を調査。その結果を数値シミュレーションによる予測と比較したところ、観測とシミュレーションが最もよく一致したのは全物質が宇宙の物質とエネルギーの総量の約31%を占める宇宙であり、プランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射の観測から推定された値とよく一致したとする。

  • シミュレーション結果に基づいた銀河団の分布

    シミュレーション結果に基づいた銀河団の分布 (出所:千葉大学)

研究チームによると、物質の総量を推定する手法として、これまで宇宙マイクロ波背景放射、バリオン音響振動、Ia型超新星、重力レンズなどが用いられてきたが、今回の研究はスローンデジタルスカイサーベイの観測データを用いて、各銀河団までの距離とどの銀河が銀河団に重力的に結合しているメンバーなのかを決定したものであり、ほかの手法とは完全に異なるものであるとしている。

なおこの手法は、すばる望遠鏡、暗黒エネルギーサーベイ、暗黒エネルギー分光器、ユークリッド望遠鏡、eROSITA望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような、広視野・深視野の大規模な撮像・分光銀河サーベイから利用可能になりつつある新しい観測データに対しても応用可能であり、今後の発展が期待できるともしている。