韓国の中小ベンチャー企業部(日本の中小企業庁に相当)は、Samsung Electronicsと協力して、非メモリ・システム半導体のエコシステムを強化し、ファブレス企業とファウンドリ双方に成長機会を提供することを目的に、有望なファブレス・スタートアップ企業に「Fables Challenge Award」を授与する制度を2022年より開始。2023年の今年は、BOS Semiconductors、Gwanak Analog、Damoa Tech、Alpha Solutions、ONE Semiconductorの5社を表彰したことを発表した。

Samsungは、これらの企業にファウンドリMPW(マルチプロジェクトウェハ)生産プロセスへの優先アクセスを含むスタートアップ企業向け各種サポートを提供する。MPWは、シャトルサービスとも呼ばれるファウンドリサービスで、フォトマスクを複数の生産委託元でシェアすることにより、1枚のシリコンウェハ上に各社が設計したICをそれぞれ描画し、生産委託費を抑えることができ、主に少量生産などで活用されている。

韓国中小ベンチャー企業部はこれらの受賞企業に対し、それぞれ1億ウォンの研究開発補助金を支給する予定で、同部の呉基雄(オ・ギウン)次官は「韓国の半導体産業、特にシステム半導体分野の今後の発展のためには最高のファブレス企業を育成することが急務である」と強調し、「ファブレス企業とファウンドリ企業のバランスの取れた発展に向け、政府は積極的に取り組んでいく」と今後もファブレス企業の育成を推進していく姿勢を見せている。

  • 2023年のFabless Challenge Awardを受賞した5社

    2023年のFabless Challenge Awardを受賞した5社の代表と韓国政府中小ベンチャー企業部のオ・ギウン次官 (出所:BOS Semiconductors)

現代自動車出資の車載半導体ファブレスのBOSがSuper SoCを2027年に商品化へ

今回受賞した5社のうちの1社であるBOS Semiconductorsは2022年5月に設立されたばかりのファブレスで、Samsungでシステム半導体を開発してきたパク・ジェホン代表が創業した。

同氏はSamsung在職当時、車両関連事業を担当し、自律走行用半導体、インフォテインメントシステムなどの開発に携わってきた経緯もあり、BOSは韓国の自動車メーカーである現代自動車グループからの投資を受け入れている。また、Samsungと協力して車載Super SoCの開発にも挑戦するという。Super SoCとは、PCに例えるとCPUにすべての演算を行わせるようなもので、自動車の運行と制御、管理などをすべて1チップ(Super SoC)で処理できるだけの高い性能を実現させようというもの。車載半導体分野で存在感をなかなか発揮できない韓国半導体産業界にあって、こうした取り組みが意味のある成果に結びつくかが注目されいる。

なお、BOSによると現在開発中の自律走行用ニューラルネットワーク処理プロセッサ(NPU)を2025年までに量産させ、2027年には車載Super SoCを商用化する計画だという。同社は、NPUとSuper SoCの両方をSamsung Foundryで生産するための準備を進めており、5nmプロセスを採用することが見込まれているという。