東北大学病院は、治験をはじめとした先端的な治療を提供するための専用病棟として「先端治療ユニット」を開設し、9月上旬より本格稼働を開始したことを発表した。
既存の治療法が十分に効かなかった患者にとって、薬事承認されていない新たな治療法は、希望の光になりうる存在だ。しかし、治験をはじめとした新たな治療法(薬剤・機器・手術方法など)の開発は、患者の安全を第一とした高い倫理性、研究を行うための確かな医療技術などに加え、さまざまな規制をクリアしながら治験を効率的かつ確実に運用するため、組織としての充実した体制が必要となる。
そして、近年の新たな薬剤などによる治療研究では、こうした運用が複雑化し対応が難しいものが増えているといい、従来のように、通常治療の患者と同じ一般病床において特殊な運用や対応が必要な最新の治療である治験を行うことが、少しずつ困難になってきているとする。
そこで東北大学病院では、これまでコロナ専用として運用していた病棟を、5類感染症への移行後に機能転換。未来の医療のための新たな病棟として先端治療ユニットを設置したとのことだ。この病棟では、難しい対応が必要とされる治験患者を集結させ、治験に特化したスタッフを配置することにより、より専門性の高い治験を行うことができるようになるという。
同病院では、こうした専門的な治療が可能な病棟の稼働に向けて、2022年度後半よりワーキンググループを立ち上げ、医師・臨床研究コーディネーター・看護師が中心となって準備に着手。2023年6月1日に病棟の稼働を開始し、今般の本格稼働に至ったとする。先端治療ユニットでは、疾患に対してはもちろん、治験に関しても専門的な知識と経験を備えた医療チームが、難易度の高い治験を安全かつ円滑に実施し、患者のニーズに合わせた個別医療を提供するとしている。
医療法に基づき「臨床研究中核病院」の1つに指定されている東北大学病院は、国際水準の臨床研究や医師が主導する治験の体制を整備するなど、革新的医薬品・医療機器開発の中心的役割を担っている。同病院は、現在も国内トップクラスの治験受託数を誇っているというが、先端治療ユニットが稼働することによって、製薬企業から依頼される治験がさらに増加することが期待されるとする。
依頼数の増加は、患者にとっては最先端医療に触れる可能性が高まることを意味するのに加え、病院としても重要な経験を得る機会の増加につながるという。数年後に承認されて一般診療でも扱われるようになるであろう新規薬剤の治療を先んじて経験できることから、一般診療においても常に最先端の医療を行い、日本の医療をリードする病院としての機能が充実することにもつながるとした。
また、東北大学が独自に研究を進める、患者に使用されたことが無いまったく新たな治療法も開発されていることから、企業主体の治験のみでは難しく、アカデミアでしかできない世界初の治療法に対する早期の臨床試験を、安全に実施する病棟としての役割にも対応できるよう準備を進めているとしている。