花王は9月11日、乳幼児の腕や額、臀部の肌に存在する菌の量や菌叢の実態を調査し、臀部は他の部位より菌量が顕著に多く、相対的に腸内細菌類が多く存在していることを発見したと発表。さらに、臀部皮膚上の菌の種類と「皮疹」との関係性を検討したところ、皮膚上の腸内細菌類の存在比率が低いほど、肌状態が良好であることを確認したと併せて発表した。
同成果は、花王 サニタリー研究所の研究チームによるもの。詳細は、2023年7月15日~16日に大阪で開催された「日本小児皮膚科学会第47回学術大会」にて発表された。
花王では、肌状態や歩き方、睡眠など、さまざまな視点から乳幼児の研究に取り組んでおり、その一環として今回の研究では、乳幼児を対象に肌のいくつかの部位の菌量や菌叢の実態を調べ、肌の状態との関連性を明らかにする検討を行ったという。
研究では生後3か月~24か月の乳幼児30名が対象とされ、前腕、額、臀部の皮膚上の菌が採取された。額と前腕の菌は、保護者が朝に専用の綿棒を用いてふき取ることで採取され、臀部の菌は、前日の入浴から翌朝まで排便をしていない日に同様の方法で採取された。
採取された菌については、次世代シークエンサーを用いて菌叢解析が行われた。同解析は、細菌が持つ「16SrRNA遺伝子」の配列を解読することにより、どの菌が相対的にどれくらい存在するかを調べる手法である。
そして、すべての部位の菌叢が解析できた乳幼児のみを対象に、各部位の菌量や菌叢を比較した結果、乳幼児の臀部の皮膚の菌の総量は、額と比べて有意に多いことが判明した。
また、各部位における皮膚常在菌や口腔内常在菌、腸内細菌の相対存在比率を検討した結果、臀部の皮膚は、前腕や額と比べて腸内細菌類の存在比率が高く、月齢が低い乳幼児はその傾向が強いことが明らかにされた。つまり今回の結果から、臀部は菌量や菌の種類でほかの部位と異なる特徴があることが確認されたのである。
腸内細菌には消化酵素を持つものが多く、肌を刺激する菌も存在することもわかってきている。そこで研究チームは次に、臀部における菌の種類と肌の状態について検討したという。
この調査では、保護者が自宅にて撮影した生後4か月~8か月の乳児36名の肛門周囲部、排尿部、臀部の画像について、専門家による皮疹スコア判定が実施された。また、乳児の臀部の菌叢解析を行い、皮膚常在菌や腸内細菌の相対存在比率を検討したという。
皮疹スコアの算出においては、紅斑と浮腫および丘疹と膿疱を有症面積と数からそれぞれ7段階で評価し、肛門周囲部・排尿部・臀部の肌の合計が求められた。そして同スコアと臀部の皮膚常在菌類や腸内細菌類の相対存在比率の関連性の検討を行った結果、皮疹スコアと腸内細菌類の比率に有意な正の相関が見られたとする。
以上のことから研究チームは、臀部の肌状態には腸内細菌類と常在菌のバランスが関係している可能性が考えられるとしている。
今回の研究から、乳幼児の臀部は前腕や額といったほかの部位よりも菌量が多く、腸内細菌類の比率が高いことが確認された。さらに乳幼児の臀部における皮疹の状態は、皮膚菌叢中の腸内細菌比率と関連があることも見出された。これを受け花王は、皮膚上で腸内細菌が増えにくい環境を整えることが、乳幼児の肌をより清潔に保つ商品開発の一助になると考えているとしている。