アサヒグループのアサヒバイオサイクルは、ビール製造工程でできる副産物である「ビール酵母細胞壁」を活用した農業資材を利用した肥料が、豊田スタジアムの芝向け肥料として採用されたことを発表した。
ビールの製造過程では副産物としてビール酵母が残るとされているが、ビール酵母には、栄養分やうまみ成分を含んだ中心部分と、それを殻のように覆う「ビール酵母細胞壁」がある。この「ビール酵母細胞壁」は、植物の生育に役立つ有効成分が含まれていることが知られているものの、不溶性であることから今まであまり活用されていなかったという。
そこでアサヒグループでは研究を続け「ビール酵母細胞壁」を加工処理できる独自技術を開発し、農業資材として活用することに成功。食品由来の安全・安心な資材で、植物の根の成長促進や免疫力の向上に対する効果が実証されているほか、芝の品質向上、農薬や化学肥料の使用量の低減により環境負荷の低減に役立つものとして、農園やゴルフ場、野球場などで使用されている。
豊田スタジアムは、球技専用スタジアムとしては国内でも規模が大きく、フィールドには天然芝が用いられ健全かつ強靭な芝生育成を目指したグラウンド管理がされているとするが、この豊田スタジアムにて2021年10月からビール酵母細胞壁を活用した農業資材の比較試験がフィールド外周にて開始。芝の根張りや回復力など、良好な試験結果を受けたことから、2023年5月から全面採用となり、他の資材に加えて2~3週間ごとに定期散布し、順調に芝が生育されているといるとのことで、アサヒバイオサイクルでは、ビール酵母細胞壁を活用した農業資材により、芝の根がしっかりと張ることでクッション性が高くなり選手の体への負担が軽減されることなどが期待されるとしている。
豊田スタジアム ヘッド・グラウンドキーパーの田井中修氏は、「豊田スタジアムは試合数が多いため年間を通して養生期間が少なく、これまでも新技術の発掘、活用、検証のほか、さまざまな資材を用いた肥培管理に取り組んで来た。その中で『ビール酵母細胞壁の農業資材』の評判を聞き、試験を経て、芝の根張りが良くなり耐暑性や擦切れ抵抗性に効果があると感じている。今後もより良いグラウンド管理を行っていきたい」と述べている。
なお、アサヒバイオサイクルは、引き続き豊田スタジアムと連携し、選手にも環境にもやさしい芝の育成に貢献することを目指すとしている。