2023年6月14日~16日、ネットワークテクノロジーのイベント「Interop Tokyo 2023」(Interop)が千葉県の幕張メッセで開催された。最新のネットワーク機器やプロトコルのInteroperability(相互接続性)を検証する場として始まった同イベントでは、展示会とカンファレンスのほか、例年「ShowNet」という会場内にネットワークを構築するプロジェクトを実施している。
ShowNetでは、展示会出展企業などのコントリビュータから提供を受けた機器・ソフトウェアを用いて、展示ブースの出展者向けにインターネットに接続できるネットワークを構築する。同ネットワークのコンセプトデザインと設計、構築、運用を担うのが、NOC(Network Operation Center)と呼ばれる産学からボランティアで参加する技術者たちだ。そして、一般公募やShowNet参加企業などから集まったボランティアスタッフのSTM(ShowNet Team Member)が現場での構築・運用作業のサポートを担当する。
さまざまなエンジニアと交流でき、最新の機器やサービスに触れられる点などを醍醐味に、例年、InteropではSTMへの応募を呼び掛けている。だが、一度も触れたことが無い機器を用いてぶっつけ本番でネットワークを構築するうえ、応募者は選考と面接をクリアしなければいけない。通常業務から一定期間離れる必要もあるため、STM参加への技術的・時間的なハードルは高い。しかし、NECでは毎年、可能な限り、自社グループの若手人材をSTMに送り出すようにしている。
ネットワークの実験場のようなShowNetに、NECはどんな価値を見出しているのか。今年のShowNetにNOCとして参加した同社のエンジニアに話を聞いた。
自ら手を動かして、レイヤー0からネットワークを構築
NECでは、「ロールプレイを通じたエンジニアリング教育の場」としてShowNetを捉えている。ITインフラ全体でクラウドの活用と業務効率化が志向されている中で、若手のインフラエンジニアほどITインフラそのものに関わる機会が減ってきている。同社はそのことを懸念しており、ShowNetはエンジニアリングの機会を得られる貴重な機会だという。
Interop Tokyo 2023でNOCを務めた、NEC ネットワークソリューション事業部門 ネットワークサポートサービス統括部 シニアプロフェッショナルの齋藤修一氏は、「コンピューティング機能はパブリッククラウドが提供するサービスを利用し、ネットワークもすでにできあがっている状態のものがある現代では、それらの根幹を成す技術に触れて、実際にどう動くか、いかに想定通りに動かないかを知る機会が減ってきている。『ソリューション売り』が主流になっている中で、現場で手を動かした経験があることで、お客さまに必要なリアルな解決策を提案できると考える」とエンジニアリング経験の重要性を語った。
2023年のShowNetにおいては、ネットワークの構築作業が6月1日から約2週間かけて幕張メッセで行われた。最初の約1週間が「HotStage」と呼ばれる事前検証期間で、さまざまな検証や実験が行われる。HotStage終了後からイベント直前までの4日間がネットワークの最後の作り込みを行う「Deploy」の期間となる。
STMにはHotStageから参加するメンバーと、Deployから参加するメンバーがいるが、現場での実作業は、細かなルールやノウハウがまとめられた「オペレーションガイド」を基に行われる。同ガイドとNOCが作成した設計資料を基に、STMはラックにサーバやスイッチをマウントしたり、LANケーブルを引き回したりするほか、セキュリティや運用監視ソフトウェアの設定や、ネットワークの疎通確認などの作業を行っていった。
また、STMはイベント会期中、Shownetで利用した機器とネットワークで提供する機能などを解説する「ShowNetウォーキングツアー」の解説員のほか、ネットワーク利用者からの問い合わせに対応するサポート窓口も担当した。
齋藤氏はShowNetについて、「レイヤー0(ラックやケーブル)からネットワークに関わることが可能な数少ない機会であり、若手人材が自分で手を動かす濃い経験を積める場所だ」と説明した。
「できない自分に腹が立つ」 - 3人のSTMが語る体験談
NECからはグループ会社を含めて3人がSTMとしてShowNetに参加した。今回の取材では、ShowNetへの参加で得た経験や感想のコメントを3人から頂けた。
NECネッツエスアイから参加した瀬名波裕司さんは入社4年目で、上司の勧めでSTMに応募したという。STMでは主にネットワーク機器の設定、ラックマウント、ケーブリングから構築後の正常性確認を担当した。