三菱重工業は、米・FirstElement Fuelと共同実施している水素ステーション向けの90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプの長期耐久試験において累計250時間の運転を達成し、長期耐久性を確認したことを発表した。

本格的な水素社会の実現には、水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)などの利用拡大に伴い、液体水素の活用が不可欠となる。液体水素昇圧ポンプは、水素を液体状態で昇圧することによって、機体の水素を昇圧する方式に比べてエネルギー量を約4分の1まで低減できるもので、水素社会における環境負荷低減に貢献することが期待される。

三菱重工は、原子力発電所向けをはじめとする各種産業用ポンプの納入実績で培った技術と経験のもと、2023年4月に水素ステーション向けの90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプを開発。同社総合研究所長崎地区の極低温試験設備において、液体水素を90MPaまで昇圧することに成功している。

そして現在は、カリフォルニア州リバモアにあるFEFの水素供給施設を用いて、長期耐久試験を実施しているとのこと。同社は液体水素を使った試験を実際の水素ステーション規模で実施することを重要視しているといい、同試験においては、実際の水素ステーションと同じ運転条件下で何時間も連続して試験を実施可能な水素供給設備が整備されているという。

この試験では、液体水素昇圧ポンプの軌道・停止運転を約300回にわたって実施し、約30tもの液体窒素を昇圧。その後の分解点検の結果、消耗品を含む各種部品の健全性や耐久性が確認できたとしている。なお、同試験で使用された水素は実際にFCVの燃料として利用されており、CO2排出量削減にも寄与しているとしている。

  • 三菱重工の90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプと長期耐久試験を実施しているFEFの水素供給施設の様子

    三菱重工の90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプ(上)と長期耐久試験を実施しているFEFの水素供給施設(下)の様子(出所:三菱重工)

三菱重工の液体水素昇圧ポンプは、吐出圧力90MPaで1時間あたり160kgの大流量運転を継続的かつ安定的に達成しており、またボイルオフガスによる水素ロスが極めて少ないため、水素ステーション運営の経済性を高めることもできるとする。同社はこのポンプについて、バスやトラックといった大型FCVを中心に需要拡大が見込まれる水素ステーションへの適用を目指すという。

なお、両社による試験はFEF社の水素供給施設を用いて来年まで継続する予定だといい、今後は同ポンプを米国をはじめとする世界各国の液体水素ステーション市場へと投入予定とのこと。三菱重工は、水素社会の実現に寄与する新たなソリューションとなりうる90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプの開発・提供を通じて、グローバル社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献していくとしている。