日立製作所(日立)と日立パワーソリューションズ(日立パワー)は9月11日、関東圏に広がる日立グループの約20カ所の事業所をデジタルでつなぎ、複数拠点にまたがるエネルギー利用の全体最適を図る取り組みを開始すると発表した。
同グループは、複数拠点にまたがって各事業所が有する再生可能エネルギー(再エネ)とオフサイトの再エネを融通し、電力の需給バランスを調整する。今後、今回の取り組みで技術的・経済的効果が実証された機能を顧客に提供していく。また、2025年3月には多拠点エネルギーマネジメントシステムとしてモデル事例の確立を目指す。
日立パワーも今回の取り組みを通じてエネルギーマネジメントサービス事業を強化し、2030年に400~500億円規模の売上収益を目指すとのこと。
「余剰再エネ発生を回避する狙いがある。例えば、太陽光発電では市場価格が安くなっているため、発電にかかるコストに対してその差額分が需要者の負担になっている。電力コストを抑制しつつ環境価値を最大限に活用していく」と、日立パワー ソリューション事業推進本部の北本優介氏は説明した。
両社はこれまでは、需要と供給の2拠点間に対し、自己託送制度に基づく再エネの電力融通ソリューションを提供してきた。今回導入するのは、需要と供給がそれぞれ複数拠点の関係となる多拠点型のシステム。再エネ電力を欲しい場所に、欲しい量を、欲しい時に分配し、需給バランスを安定させることが可能だという。
具体的な施策として、まずは2023年12月に日立パワーの勝田事業所で、空調機器のデマンドレスポンス(需要側エネルギーリソースの保有者がそのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを供給状況に応じて変化させること)機能の導入を開始する。そして、2024年6月より順次、2拠点間の再エネ融通を複数拠点間の融通に拡張することで、取り組みを加速させていく。
この多拠点エネルギーマネジメントシステムでは、電力の需要パターンが異なる多数の拠点を束ねることで、余剰電力が発生しがちな日中や週末の再エネの供給先を確保し、電力を無駄なく消費することができる。例えば、週末に稼働しない製造拠点で余った電力を、連続稼働するクリーンルームやデータセンターなどに融通することが可能。
「余剰電力を市場運用することで、設備運用のメリットも向上していく。自社の運用で得られるさまざまな経験値は需要者にとっても有用なもの。日立グループだけにとどまらず拠点を拡大していきたい」(北本氏)