大手先端材料メーカーである昭栄化学工業が9月7日付で、北米子会社である昭栄エレクトロニクスマテリアルズ(昭栄)とともに、Nanosys社との最終的な資産購入契約を完了したことをNanosysが発表した

これにより昭栄化学は量子ドット事業を含むNanosysの関連する資産を実質的にすべて取得する。2023年9月6日時点で、Nanosysの販売およびマーケティングチーム、量子ドット研究開発チームおよびカリフォルニア州シリコンバレーの研究所は、昭栄化学の一部となった。

量子ドットは、Mini LED、QD-OLED、エレクトロルミネセンスNano LEDなどの次世代ディスプレイを実現する重要な技術であり、今回の買収により昭栄化学は先端材料業界の主要企業としての地位を強化する一方、旧Nanosysメンバーは昭栄化学の一員として既存の顧客への製品とサービス引き続き担当し、Nanosysブランドの運営を継続していくとしている。

微粒子製造に対する昭栄化学の広範な製造能力と量子ドットに対するNanosysの専門知識を組み合わせることによって、量子ドットに新たな成長と進歩の時代をもたらすことが期待される。

昭栄化学とNanosysは、2019年に「材料供給契約」を結び、昭栄化学が量子ドットの生産を受け持つ体制の構築を進めてきた。その結果、2023年には昭栄化学側で100%の生産を賄える体制ができ、今回の契約に至った。量子ドットに対する研究開発はNanosysから移ってくるメンバーが引き続き担当することになる。

今回の契約に至った背景には、量子ドットの主要な用途であるディスプレイ市場がアジアであることに加えて、生産を米国から日本に移すことで製造コストを低減し、市場を拡大することにある。昭栄化学は、福岡県の糸島リサーチパークに新工場を建設中であり、今後も量子ドットの生産能力を強化していく(図1および福岡県のニュースリリース)。

  • 昭栄化学が福岡県糸島に建設中の新工場のイメージ

    図1 昭栄化学が福岡県糸島に建設中の新工場のイメージ (提供:昭栄化学)

量子ドットの開発および生産は、韓Samsungも積極的に進めており、これまでNanosysと市場を牽引してきた。今回、昭栄化学がNanosysを買収したことで、量子ドットの世界的な供給を、昭栄化学とSamsungが担いながら、応用市場を拡大していくことになる(図2)。

  • 量子ドットのディスプレイ応用のロードマップ

    図2 量子ドットのディスプレイ応用のロードマップ。これまでNanosysが牽引してきたディスプレイ応用に向けた量子ドット技術を、今後は昭栄化学の傘下で旧Nanosysのメンバーを中心に継続的に押し進めていく (図は、昭栄化学提供)