ニコン子会社のニコンソリューションズは、AIによって画像の取得・解析を自動化し、がんや神経疾患、感染症などの病気のメカニズム解明や創薬の研究開発を加速させるデジタル倒立顕微鏡、スマートイメージングシステムの新製品「ECLIPSE Ji」を9月8日に発売することを発表した。

  • ニコンが発売するスマートイメージングシステム「ECLIPSE Ji」

    ニコンが発売するスマートイメージングシステム「ECLIPSE Ji」(出所:ニコン)

創薬をはじめとするライフサイエンス研究においては、細胞を活用した薬効評価技術が新薬開発の効率化に重要な役割を果たしている。そのため、中期経営計画において成長ドライバの1つに創薬支援を掲げるニコンは、新薬候補となる化合物評価の高精度化や効率化によって、創薬の研究開発を支援するビジネスを展開しているとする。

創薬の研究開発では顕微鏡の操作が欠かせないが、その中でも画像の取得・解析は複雑で、専門知識を必要とする。そこでニコンは、AIの一種であるディープラーニングを活用し、画像取得から解析に至るまでの操作を自動化したスマートイメージングシステムのECLIPSE Jiを開発したとのことだ。

新製品はその特長として、以下の4点を挙げる。

  • AIで顕微鏡操作を自動化し、サンプルセットからレポート出力までを効率化
  • 1つの細胞から集団までを可視化し、ユーザーのデータ分析を促進
  • 装置の拡張性を高め、研究ニーズに柔軟に対応
  • オールインワンで、設置場所の自由度を高める

AIによりサンプルセットからレポート出力までを効率化

ECLIPSE Jiにウェルプレートを設置し、アッセイの選択と基本情報の入力を終えると、AIが自動でフォーカスや路好条件の設定などを行った後、アッセイに最適な画像の取得・解析やデータ抽出を行うという。このようにAIによる顕微鏡操作を自動化することで、サンプルセットからレポートまでの出力を一貫して効率化し、ユーザーのワークフロー改善に貢献するとする。

またニコンによると、画像解析アルゴリズムを構築する必要がないといい、これにより専門知識が無くても利用でき、属人的なばらつきも防ぐことができるため、解析成功率の向上が期待できるとしている。

  • ECLIPSE Jiによるワークフローのイメージ

    ECLIPSE Jiによるワークフローのイメージ(出所:ニコン)

さまざまな細胞を可視化しユーザーのデータ分析を促進

ECLIPSE Jiでは、直感的な操作が可能なGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を採用。グラフ上の任意の箇所を選択すると、該当する細胞がハイライトされるなど、ウェルプレートの状況をさまざまな方法で表示できるとする。

  • GUIレイアウトのイメージ画像

    GUIレイアウトのイメージ画像(出所:ニコン)

また細胞単位のデータをもとに、外れ値の分析や細胞集団としての傾向の把握も可能で、ユーザーのデータ分析を支援し研究開発の効率化や加速に寄与するさまざまなツールを備えているという。

さまざまな研究ニーズに対応する拡張性

新製品は倒立顕微鏡として研究用途でも使用できるハードウェアの拡張性を備え、共焦点レーザ顕微鏡システム「AX」や、高感度顕微鏡デジタルカメラなどをアドオンで搭載できるとのこと。さらに、培養した細胞をライブ観察できるステージトップインキュベータも接続可能だという。

ニコンは、このように装置の拡張性を高めることで、アッセイなどの定型業務から応用研究にわたるまで、幅広い作業に対応するとしている。

  • さまざまな用途での使用を可能にするため、ハードウェア面での拡張性が高い設計になっているという

    さまざまな用途での使用を可能にするため、ハードウェア面での拡張性が高い設計になっているという(出所:ニコン)

設置場所の自由度を高めるオールインワンの筐体設計

細胞の評価を行う際には、暗室内で目的の細胞を蛍光試料で光らせて観察する手法が主流とされている。しかしECLIPSE Jiでは、顕微鏡を筐体の中に納めているため暗室を用意する必要が無く、通常の実験室でも落射蛍光などの蛍光観察が可能だとする。

さらに、光源やデジタルカメラといった周辺機器も同じ筐体でひとまとめになっているため、設置場所の自由度が高い点も特徴だとした。

ニコンによると、接眼レンズの無い特徴的な設計を持つ新製品は、顕微鏡操作を効率化することで、ユーザーが得られたデータをもとにした分析や考察といったより創造的な活動に集中できるようサポートするという。また、倒立顕微鏡として研究用途でも使用できるハードウェアの拡張性を備え、アッセイなどの定型業務から応用研究まで幅広く対応が可能だとする。

なお、同社は画像統合ソフトウェア「NIS-Elements SE」も同時発売するとしており、両製品を合わせて使用することで、画像の取得から解析、データ表示までを定型化したアッセイが可能だとしている。