信越化学工業は9月5日、同社が2019年に米Qromisよりライセンスを取得したGaN成長専用の複合材料基板「QST基板」をGaNパワーデバイスの社会実装に不可欠な材料であるとの判断から、今後の開発ならびに製品上市を推進していくことを発表した。
QST基板はGaNと熱膨張係数が同等であるため、エピタキシャル層の反りやクラックの抑制が可能であり、大口径で高品質な厚膜GaNエピタキシャル成長を可能とする基板材料という特長があり、GaNパワーデバイス、RFデバイス、ディスプレイ向けマイクロLEDの成長基板などへの適用が期待されているという。
すでに同社はQST基板の販売に加え、顧客の要望に応じてGaNを成長したエピタキシャル基板の販売も行っており、その口径も150mmならびに200mmを用意。300mm化についても研究開発を進めているという。
また、QST基板の品質改善に対する研究開発も進められており、これまでに貼り合わせプロセスに由来する欠陥の改善による高品質化、GaN成長の厚膜化ニーズに対応することを目的とした最適なバッファ層を成長させたテンプレート基板の提供などを行ってきており、現在までに安定して10μmを超すエピ成長を実現しているとするほか、20μmを超える厚膜GaN成長の達成や、パワーデバイスにおける1800Vブレイクダウン耐圧の達成なども報告済みだとしている。
なお、今後のQST基板事業の推進に向けた一環として同社はOKIの有する結晶膜を成長基板から剥離し異種材料基板へ接合する技術「CFB(Crystal Film Bonding)技術」をQST基板に適用することで、QST基板からGaNを剥離し異種材料基板へ接合する技術開発に成功したことも報告しており、今後の縦型パワーデバイスの進展に向けた道筋をつけたともしており、これらの開発成果と顧客からの引合い状況を踏まえ、生産増強を継続し、顧客からの需要に対応を図っていく予定としている。