OKIは9月5日、信越化学工業と共同で、信越化学が独自改良したGaN成長専用の複合材料基板である「QST基板」からOKIの結晶膜を成長基板から剥離し異種材料基板へ接合する技術である「CFB(Crystal Film Bonding)技術」を用いてGaN機能層のみを剥離し、異種材料基板へ接合する技術の開発に成功したことを発表した。

次世代パワー半導体材料であるGaNは、LEDの活用から始まり、パワー半導体や高周波デバイスとしての活用が進みつつある。中でも縦型GaNパワーデバイスは、電気自動車(EV)の走行距離の延長や給電時間の短縮など基本性能を向上するデバイスとして、今後需要が大きく拡大することが期待されているが、縦型GaNパワーデバイスの実用化に向けてはウェハの大口径化と大電流制御を可能にするための縦型導電の実現という2つの課題を解決する必要があるとされている。

信越化学のQST基板は、GaNと熱膨張係数が同等であるため、反りやクラックの抑制が可能であるという特性を有していることから、200mmより大きなウェハでも高耐圧な厚膜GaNの結晶成長を可能とすることが期待されている。今回、OKIのCFB技術を活用することで、QST基板から高デバイス特性を維持した状態でGaN機能層のみを剥離することが可能であることが示されたことに加え、GaN結晶成長に必要な絶縁性バッファ層を除去し、オーミックコンタクトが可能な金属電極を介してさまざまな基板に接合することができることも期待されているため、放熱性の高い導電性基板に接合することで、高放熱と縦型導電の両立を実現することが期待できるようになるという。

  • 今回開発された信越化学のQST基板に対するOKIのCFB技術の適用の概要

    今回開発された信越化学のQST基板に対するOKIのCFB技術の適用の概要 (出所:OKI)

なお、両社は今後、GaNデバイスを製造する半導体デバイスベンダなどに向けて、信越化学がQST基板またはエピタキシャル基板を提供し、OKIがパートナーリングやライセンスによってCFB技術を提供することで、縦型GaNパワーデバイスの実現と普及を目指すとしているほか、OKIでは、CFB技術によって単一材料の枠を超えた付加価値を半導体デバイスに提供し、同社のキーメッセージである「社会の大丈夫をつくっていく。」の実現につなげていきたいとしている。