経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、政府が目指す「2050年カーボンニュートラル」を実現するためのグリーンイノベーション事業の一環として、運輸事業者からバスやタクシー、トラックなどといった“電動商用車”の各種運行データを収集し解析する事業を始めたと公表した。
日本のCO2排出量のうち、自動車を中心とする運輸部門の排出が約17%を占め、その内の約40%がトラックやバスを中心とする貨物を運ぶ“商用車”が占めると考えられている。同事業は、そうしたこれから進むであろう商用車の電動化を的確に進めるために、その商用車の運行データを収集し、電動化を最適に進める基盤データの作成を行うために実施されるもの。
この膨大な基盤データをつくる作業は、産業技術総合開発研究所(産総研)が担当。この基盤データをつくる情報解析事業はかなりの高度なものとなる見通しのため、具体的な解析技術・態勢はまだ公表されていない。当該プロジェクトは「スマートモビリティ社会の構築に向けたEV・FCVの運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステムの確立」という事業名で、2022年度から2030年度まで実施する計画だ。NEDOの担当部署は省エネルギー部になる。
同事業では、これから本格化する“商用車”での電動化に向けて、その充電用電力需要の見通しや充電タイミングなどを把握し、当該“商用車”を保有する運輸事業者が充電に伴う運行効率の低下(充電時間よる停車時間など)やその関連設備導入と保守、その契約電力の見直しなどを把握することが求められるほか、その実態に合せた運用計画・エネルギー利用の最適化を実現することも求められる。例えば、電動トラックなどが増えると、その充電インフラ(充電器など)の最適化などが重要な課題になり、その充電インフラの配置時期などの最適化が不可欠になる模様である。
“商用車”での電動化に向けた「社会全体最適を目指したシミュレーションシステム」を構築するためには、その時点ごとの運行情報や電池残量などといった車両データや充電や水素充填施設の利用データ、地図情報、気象・道路環境情報などを包括的にまとめた情報が必要になる。今回は、こうした運輸事業者としてのデータを、バスでは「関西電力」、「大阪市高速電気軌道」、「ダイヘン」、「大林組」、「東日本高速道路」が、タクシーでは「GO(旧Mobility Technology)」、トラックではトヨタ自動車、いすゞ自動車、スズキ、ダイハツ工業が参画し、商用車におけるCASE技術・サービスの企画を手掛ける「Commercial Japan Partnership Technologies」が提供(受け入れ開始時点でのデータ提供事業者/コンソーシアム)。今後も、運輸事業者としてのデータ提供者を適時、増やしていく計画である。
なお、現在、実施中のグリーンイノベーション基金事業のさまざまな公募などに関する情報については同Webサイトの「公開等情報」に掲載されている。