シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクスは、肝臓の線維化進展の診断補助や慢性肝疾患患者における病態の進展予測ができる血液検査用試薬「ケミルミTIMP-1」の日本での販売を2023年8月29日より開始したことを発表した。
肝線維化は、ウィルス性肝炎や自己免疫性疾患、過度のアルコール摂取、脂肪性肝疾患などにより、肝臓が継続的に損傷を受けることで引き起こされ、進行すると肝硬変や肝不全、肝細胞癌などにつながるリスクが上昇すると言われている。
近年、アルコールの摂取が微量にも関わらず肝臓の病気が進行する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」の潜在的な有病率の上昇が注目され、全世界における有病率は全人口の約25%、日本においては中高年層を中心に、潜在的な患者は2000万人以上いると考えられている。
現在、日本でのNAFLD診断は、体外から針を刺す「肝生検」が主流であるが、皮膚を傷つけることによる侵襲性の高さやサンプリングエラー、合併症のリスクなどが課題にあり、代わりにバイオマーカーを用いた、肝線維化の拾い上げや進度の推定が行われているようになってきているが、近年、その新たな指標として、肝硬変、肝細胞がん癌 やその他関連疾患への病態進展予測を客観的に数値化する「ELFスコア」が注目され、欧米においてはすでにELFスコアを用いたNAFLDに対する新薬の開発も進められているとする。
同試薬は、日本で初めて肝臓の線維化進展の診断補助および慢性肝疾患患者における病態進展予測に適用される試薬として承認された血清中の組織メタプロテアーゼ阻害物質(TIMP-1)を測定するために用いられるもので、同社のヒアルロン酸測定試薬やプロコラーゲンIIIペプチド(PIIIP)測定試薬と組み合わせて、免疫自動分析装置「AtellicaIM」にて測定。
測定された血清中のTIMP-1と、ヒアルロン酸およびPIIIPの値を組み合わせて、肝線維化の進展および進展予測を表すELFスコアの算出を行うのだという。
同社は、測定可能な項目としてELFスコアが追加されることにより、医療機関は1回の血液検査でより幅広い検査・診断を行えるだけでなく、スクリーニングの段階で患者の肝疾患のステージに合わせた適切な2次診療先や治療先の紹介が可能になるだろうとしているほか、患者にとっても、疾患が疑われる段階、もしくは進行していない段階で肝生検を受ける身体的な負荷の軽減につながる可能性があることに加え、医療機関へのアクセスが悪い地域に住む人に対するNAFLDの非侵襲スクリーニングの機会の拡大に貢献するだろうとしている。