島津製作所は8月31日、環境水中のマイクロプラスチックの抽出ならびに回収工程を自動化した専用の自動前処理装置「MAP-100」を発売したことを発表した。
年々、海洋へのプラスチック廃棄は増え続けており、環境やあらゆる生態系へ影響を及ぼしている。また、このままプラスチックの海洋への廃棄が増え続けば、2050年にはプラスチックの海洋への累積流入量が重量ベースで魚類よりも上回るとする試算もあり、早急な対策が必要とされている。
プラスチックにはさまざまな種類があるが、「マイクロプラスチック」はそうしたさまざまなプラスチックが波や紫外線などによって砕かれ、5mm未満、ものによっては数μmサイズに微細したプラスチックの総称であり、生物濃縮として海洋生物の体内に蓄積し、それらを食べる人間の身体にも影響を及ぼすことなどが懸念されている。
持続可能な社会を構築するためには、そうした海洋汚染を引き起こす懸念を防ぐための対策を講じる必要があるが、マイクロプラスチックの分布や発生源の対策検討などを行うためには、試料(環境水)に含まれるマイクロプラスチックがどのようなものであるかの特定が必要である。これまでそうした作業は手作業を中心に行われており、さまざまな有機物や無機物を除去する煩雑さから工程の効率や品質にバラつきが生じてしまうといった課題があったことから、前処理の難易度を下げることが求められていたとする。
こうした課題を解決することを目的に開発されたのが「MAP-100」だ。同製品は、環境水中のマイクロプラスチックの抽出と回収工程を自動化した専用前処理装置である。
同製品の大きな特徴としては、手作業によって行う場合、数十分から数時間かかっていた前処理工程を自動化でき「省力化」することができるという点が挙げられる。また、手作業においては作業者の行動にブレが起きることがあるが、自動化することで「再現性」が高くなり、データを比較する際の精度向上に繋がるとしている。さらに、作業者による試薬の取り扱いが簡素化されるため「安全性」も向上するとするほか、「MAP-100専用ソフトウェア」を活用することで、ソフトウェアの画面上で前処理工程の各条件設定を行ったり、処理中の進捗状況や処理完了予定時刻の確認なども可能となっているとする。
なお、同製品は環境省が2023年3月に公開した「河川・湖沼マイクロプラスチック調査ガイドライン」の附随書において「標準的仕様作成のために検討した装置」として掲載されている。
同社では、マイクロプラスチック分析の入口となる前処理工程を自動化することで、多角的な環境調査・研究に貢献できるだろうとしており、希望販売価格200万円(税別)~で同製品を売り出し、まずは国内外の環境分析を研究者や研究所を中心に受託分析メーカーなども対象に発売1年間で20台の販売を目指すとしている。