適格請求書(インボイス)などの保存を仕入税額控除(※)の新たな要件とする「インボイス制度」の開始まで残り1カ月を切った。納税義務のある課税事業者と、納税義務のない免税事業者の登録申請はともに進んでいる状況だが、各所に大きな影響を及ぼす同制度に対する不安の声は尽きない。

(※)仕入税額控除とは、消費者が負担した税と事業者が納付した税の額を一致させる仕組み。具体的には、売上時に預かった消費税から、仕入れなどを通し支払った消費税を差し引いて納付税を計算する。インボイス制度開始後は、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者のみが発行を許されるインボイスの保存が仕入税額控除の要件となる。そのため、免税事業者は取引先から取引排除や不当な値下げを強いられる可能性がある。
  • インボイス制度で納税額が増大する可能性がある 資料:freee

    インボイス制度で納税額が増大する可能性がある 資料:freee

経理の2人に1人が抱える不安とは?

請求書受領サービスを手掛けるTOKIUMが経理業務に携わる全国約1000人のビジネスパーソンを対象に実施した調査結果によると、残り1カ月を切った今でも、約7割が制度開始後の業務に不安を感じていることが分かった。

いちばん多かったのは「受け取るインボイスを正しく処理できるか」という不安の声で、2人に1人が回答。これまで認められてきた処理方法が制度開始後には通用しなくなるからだ。例えば、取引先から届いた請求書などに記入漏れがあった場合、現行の消費税法で認められている追記や修正ができなくなり、取引先に修正や再交付を依頼する必要がある。

  • 資料:TOKIUM(有効回答数:1008)

    資料:TOKIUM(有効回答数:1008)

また「本当にインボイスか否か」の確認も欠かせない。インボイスが発行できない免税事業者の請求書を受領してしまうと、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて納税する仕入税額控除ができなくなる。そのため、国税庁の公表サイトを活用して登録番号を一件ごと確認するといったことが新たな業務として追加される。

ほかにも、激変緩和の観点から設けられている課税事業者への6年間に及ぶ経過措置の存在により、記帳パターンが現行の3倍に増えたり、ECサイトのインボイスもすべて保存しなければならなくなったりと、経理が頭を抱えるような変更点はいくつもある。

「一般社員だから関係ない」は誤解

もし「自分は経理担当ではないから関係ない」といった考えを持っているとすれば、それは誤りである。一般社員の業務にも少なからず影響はある。

例えば、接待などで利用した飲食店の領収書や営業時のタクシー代や駐車場代(レシート)などもインボイスの対象となり、税込3万円未満の取引であっても、仕入税額控除を受けるには領収書が必要な場合がある。

この記事は
Members+会員の方のみ御覧いただけます

ログイン/無料会員登録

会員サービスの詳細はこちら