森下仁丹と近畿大学の両者は8月30日、ローズヒップ(バラの果実)の種子に含まれるポリフェノールの一種である「ティリロサイド」に、高脂血症などの脂質異常症を予防する働きがあることを明らかにしたと共同で発表した。
同成果は、森下仁丹と、近大 薬学総合研究所・同大アンチエイジングセンターの森川敏生教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、9月9日~10日に東北医科薬科大学で開催される「日本生薬学会 第69回年会」にて発表される予定だ。
同社はティリロサイドの機能性にいち早く着目し、マウスを用いた動物実験で体重増加を抑制することを確認。またその作用機序として、ティリロサイドが肝臓や筋肉での脂質代謝機能を高めることを解明している。また、ティリロサイドを配合した食品を12週間摂取させるヒト臨床試験も行われており、腹部脂肪面積や体重が減少することも確認済みだ。
そして近大の森川教授との共同研究では、ティリロサイドの脂質代謝機能を高める作用のメカニズムについて、主に細胞や動物を用いた実験でもって検証を進めているとした。今回の研究はその一環として、ティリロサイドがコレステロールの代謝にどのような影響を及ぼすかについての検討を行うことにしたという。
コレステロールというとどうしても悪いイメージがあるが、実際には生命にとって重要な脂質の1つである。身体を構成する細胞を包む細胞膜や各種ホルモン、ビタミンDなどの原料になることから、生体内での代謝は厳密にコントロールされている。
コレステロールは、食品を摂取することによる外因性のものと、肝臓で合成される内因性のものに大別され、後者は中性脂肪やタンパク質「apoB」と一緒に、「ミクロソームトリグリセリド転送タンパク」(MTP)の働きにより、「超低密度リポタンパク質」(VLDL)を形成して肝臓から血中へと分泌される仕組みだ。
血中VLDLは、「リポプロテインリパーゼ」(LPL)や「肝性リパーゼ」(HTGL)などの酵素によって分解されて「低密度リポタンパク質」(LDL)となり、末梢組織にコレステロールや中性脂肪を運搬するのである。
なおコレステロールは、肥満や生活習慣の変化によりそのコントロールが乱れると、脂質異常症になり動脈硬化などのリスクが増大することが知られている。
ヒトの肝臓由来の「HepG2細胞」をコレステロールに変換する物質を含む培養液で培養すると、細胞内でコレステロールの合成が進み、培養液中のコレステロール含量が増加する。ここにティリロサイドを添加しておくと、その濃度が上がるにつれて培養液中のコレステロール濃度が低下することが確認された。
さらに、コレステロールや中性脂肪と共にVLDLが合成される時に必要なapoBの培養液中の濃度も測定されると、ティリロサイド濃度に依存してapoB濃度が低下していることが判明。これらの結果から、ティリロサイドには肝臓からのVLDL分泌を低下させる働きがあることが推測されていた。そこで次に、マウスを使った検討を実施することにしたという。
上述のとおり、肝臓から分泌されたVLDLは血液中でLPLなどの酵素で分解されるため、LPLの働きを止めた状態で血液中のVLDL濃度変化を測定すれば、肝臓からのVLDL分泌量を評価することが可能だ。VLDLはコレステロールの他に中性脂肪も多く含んでいるため、血液中の中性脂肪濃度をVLDL濃度の指標とすることにしたとする。
あらかじめティリロサイドが投与されたマウスにLPLの働きを止める物質を投与し、その後の血液中の中性脂肪濃度の変化が測定された。すると、ティリロサイドが投与されたマウスでは、コントロール群に比べて血中中性脂肪濃度の増加が抑制されていることを確認。つまり、細胞での実験と同様にティリロサイドは生体内でも肝臓からのVLDLの分泌を抑制したことが考えられるとした。
森下仁丹では引き続き近大との共同研究を進め、ティリロサイドの多彩な機能性を明らかにしていくとしている。