ヌヴォトン テクノロジージャパンは8月30日、電気自動車(EV)のバッテリ電圧・温度・パック電流を高精度に測定する、EVバッテリ監視チップセットの量産を開始することを発表。24日には事前説明会を開催した。
EV普及拡大で需要が高まるバッテリ監視システム
昨今のカーボンニュートラル実現に向けた流れを受け、自動車メーカーは今後拡大が見込まれるEVの開発を急いでいる。その技術開発においては、リチウムイオン電池(LIB)の大容量化や高集積化により、EVの航続距離を伸長させるとともに、その安全性を向上させることが求められている。
また、近年要求が高まり続けているサステナビリティの観点からは、大量に生産されるバッテリの廃棄数を減らし循環型のサプライチェーンを構築するため、バッテリの長寿命化も重要だとする。
こうしたEVやバッテリの性能において大きな役割を果たすのが、バッテリマネジメントシステム(BMS)だ。さまざまな状況で使用されるEVバッテリを高効率かつ安定的に使用し続けるためには、その温度や充放電時の電流などといったさまざまな情報を収集する技術が不可欠となる。
これらのニーズに対応するため、ヌヴォトンでは従来より、自動車領域向けのバッテリ監視チップセットの生産を行っている。そして今般、その第4世代製品となる電動車バッテリ制御向けの新チップセットの量産を開始するという。
なお、前世代まででは、各バッテリの出力電圧と温度を測定する「バッテリ監視IC」(BM-IC)と、マイコンとの通信インタフェースとして動作する「通信IC」を提供していたが、今回の新チップセットでは、バッテリパック電流の高精度測定およびバッテリパック内の制御監視を行う「パック監視IC」(PM-IC)をラインナップに追加。これにより、従来品では実現できていなかった新たな機能を搭載したとしている。
4つの特徴を持つ新チップセット
ヌヴォトンは、新チップセットの主な特徴として以下の4点を挙げる。
- 最大25直列のバッテリセルの測定を1つのICで管理できることによるBMSの簡素化
- 冗長測定システムと双方向リング通信による安全性/信頼性の向上と開発設計の容易化
- 車両駐停車時のチップセット単独でのバッテリ異常監視による安全機能
- 電圧と電流の同期測定によるBMSの充電状態および劣化状態の高精度推定
最大25直列のバッテリセルが1つのICで管理可能に
今般量産を開始するBM-ICの「KA84950UA」は、1つのICで最大25chのバッテリセル測定が可能だ。これは、100個以上の直列接続されたバッテリセルを測定することが求められるEVのバッテリ監視において、BM-ICの搭載数を削減し、BMSの構成を簡易化することができるとする。
また新チップセットとしては、最大20chでの測定が可能な「KA84930UA」もBM-ICとして提供を開始。対応セル数の変化以外は同一の端子設計を採用しているため、必要な対応セル数に合わせてチップを入れ替え、効率的な設計を実現できるとしている。