ブリヂストンは、10月22日~29日に開催されるソーラーカーレース「2023 Bridgestone World Solar Challenge」(BWSC)において、同社が保有する再生資源・再生可能資源比率(MCN)63%の「ENLITEN」技術を搭載したタイヤを、モータースポーツ向けに初めて投入することを発表した。

  • 今般初めてモータースポーツ向けに投入されるENLITEN技術搭載タイヤ

    今般初めてモータースポーツ向けに投入されるENLITEN技術搭載タイヤ(出所:ブリヂストン)

なお同社は、BWSCの開催に先立ち「Bridgestone Solar Car Summit 2023」を開催。大会に出場する東海大学の木村英樹教授らがソーラーカーをテーマに説明を行う中、ブリヂストン モータースポーツ部門長の堀尾直孝氏が、ENLITEN技術搭載タイヤの投入について説明した。

ブリヂストンは2023年、モータースポーツ活動60周年という節目の年を迎える。長い歴史を重ねる同社においても、昨今の世界的な流れであるサステナビリティへの貢献が至上命題となっており、持続可能なモータースポーツの実現に向けた技術開発を進めているという。

こうした流れで2019年に開発されたのが、CO2排出量削減と省資源化に貢献するタイヤ軽量化技術のENLITENだ。同技術は、タイヤとしての運動性能や摩耗耐性を維持しながらその重量を軽量化することで、タイヤの転がり抵抗を削減し、タイヤ起因によるCO2排出量を約30%削減するとしている。なおブリヂストンは、ENLITENを商品設計の基盤技術として顧客のニーズに合わせたカスタマイズを行うタイヤ製品をすでに商用化しているという。

今回初めてENLITEN搭載タイヤが使用される予定のモータースポーツであるBWSCは、オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまで約3000kmもの距離を、太陽光による限られた電力で走破することを目指す大陸縦断レース。また同大会では、走破時間を競う「チャレンジャークラス」と実用性を加味して順位を決定する「クルーザークラス」が設定されている。

こうした長距離かつ過酷な環境下では、転がり抵抗の低減や高い摩耗耐性などといった高性能なタイヤが求められる。そのため今回は、参加チームがタイヤに求める条件やソーラーカーの特性を加味し、ENLITEN技術を搭載したタイヤを完成させているとする。

またこのタイヤは、MCNが63%まで向上しているとのこと。これは前回大会(2019年)の30%から大きく向上しており、東海大の木村教授も「非常にチャレンジングな取り組みだ」と話す。

こうした再生材の含有は、摩耗耐性などの物性とトレードオフの関係にあることが多い。しかし今般ブリヂストンは、再生スチール・再生有機繊維適用補強材・再生カーボンブラックなどといった再生材料を含んだ高性能タイヤを実現し、さらにクルーザークラス用のタイヤでは、もみ殻由来シリカなどを補強材として使用しているという。

  • BWSCへのタイヤ提供を通して行われるブリヂストンの挑戦の詳細

    BWSCへのタイヤ提供を通して行われるブリヂストンの挑戦の詳細

ブリヂストンの堀尾氏は、今後も「サステナブルなモータースポーツ」の実現に向けた技術開発を行っていく姿勢を強調。今回のようにMCNを63%まで向上させたタイヤはまだ商用化には至っていないものの、「モータースポーツは“走行する技術の実験の場”」と表現し、今後も乗用車への展開などを見据えた開発をモータースポーツを通じて行っていくとしている。

  • 今後の技術開発の見通しを語るブリヂストンの堀尾直孝氏

    今後の技術開発の見通しを語るブリヂストンの堀尾直孝氏