日本とオランダによる対中半導体輸出規制の実施を控えた2023年6月から7月にかけて、中国からの半導体製造装置の輸入額が急増し過去最高を記録したと英Financial Times(FT)が8月25日付けで報じている。日本は7月23日から輸出規制を実施、オランダも9月1日から実施する予定となっている。
これに先立ち、米国は昨年10月から中国への先端半導体製造装置の輸出を事実上禁止しているが、中国の税関総署による貿易統計によると、2023年6-7月の半導体設備の輸入額は計50億ドルとなり、前年同期比べ70%増となったという。中国の最大手ファウンドリSMICやNANDベンダのYMTCなどといった中国の半導体企業の大半が日米オランダの製造装置メーカーに製造設備の大半を依存しており、例えば6月および7月におけるオランダからの製造装置輸入額は5月比で2倍に増加。その大半がASMLのArF露光装置(液浸含む)が占めたものと見られている。また、日本やシンガポール、台湾などからの輸入も増加しており、日本ならびにオランダの輸出規制が実施される前に製造装置を確保することで、影響を最小限にとどめようとしているものとみられる。
こうした動きを見せる一方、多くの中国企業がそうした規制の対象に該当しない数世代前の半導体製造装置を用いたレガシー半導体の生産能力を拡大させ、世界の半導体市場での存在感を増そうとしている動きも見えてきている。民生品や電気自動車、グリーンエネルギー分野をはじめとする産業分野などに向けた半導体がそうしたレガシープロセスで製造されており、存在感を増そうとしているようである。なお、米国政府は対中半導体規制品目のさらなる拡大に向けた検討を進めていると噂されているが、背景には中国勢がこうした廉価なレガシープロセスで製造した半導体で市場における存在感を増すことを危惧していることがある模様である。