大阪ガスとENEOSは8月29日、大阪港湾部にて風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー由来の水素である「グリーン水素」を活用した「国産e-メタン」の大規模製造に関する検討を始めたことを発表した。グリーン水素を活用したメタンの大規模製造は国内初とされ、水素活用による脱炭素化への貢献を目指すとしている。
大阪ガスは、再生可能エネルギーを活用して製造した水素に二酸化炭素(CO2)を反応させ、都市ガスの主成分であるe-メタンを合成する「メタネーション」技術の開発を行っている。
今回の検討ではENEOSが、海外で製造したグリーン水素を、水素と比べて取り扱いが容易なメチルシクロヘキサン(MCH)に変換して輸送し、輸送先のMCHタンクにて保管。大規模なMCHサプライチェーンの構築を行うことで、安定的な水素供給を実現することが想定されている。
MCHに変換することで、液体の状態を維持できる温度範囲が広いため効率のよい輸送および安定的な貯蔵、触媒による脱水素化で水素を取り出せるようになるとするほか、ガソリンに近い構造(消防法上は危険物第4類第一石油類でガソリンと同じ扱い)となるため石油精製技術や既存のインフラを最大限活用でき、初期投資を大幅に削減することが可能だとしている。
こうして調達されたグリーン水素を、大阪ガスが三井化学などの近隣の工場などから調達したCO2を原料に合成し、e-メタンの製造を行うとする。両社は、2030年には大阪ガスの都市ガス1%相当である6000万m3/年(1万Nm3/h、一般家庭約25万戸相当)のeーメタン製造を目指すとしている。この1%相当がe-メタンで代替できると、CO2がおよそ11万7000トン削減できるとしている。
CO2排出量が大きい産業用の高温熱分野の多くでは、石炭や石油を利用することが多く、これらの分野において天然ガスやe-メタンを活用できればCO2の排出量削減、カーボンニュートラル化の実現も近づくだろうと両社では説明しており、e-メタンの社会実装に向けて今回の取り組みを着実に進めていきたいとしている。