大阪公立大学(大阪公大)は8月28日、食品の細菌汚染レベルを評価する検査項目「一般生菌数」を、電流を用いて簡便に測定できる検査技術を開発し、従来は検査結果が出るまでに2日間を要すため商品の出荷後となっていたが、それをわずか約1時間にまで大幅に短縮することに成功したと発表した。

同成果は、大阪公大大学院 工学研究科の池田光大学院生、同・床並朗大学院生、同・椎木弘教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学学会が刊行する分析化学に関する全般を扱う学術誌「Analytical Chemistry」に掲載された。

  • 今回開発された技術のイメージ

    今回開発された技術のイメージ(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

人間の胃はよく知られているように強力な胃酸で取り込んだ食物を分解できるほか、食物に付着している細菌などもある程度は分解可能だ。しかしそれも限度があり、菌の数が多ければ食中毒などになってしまい、菌の種類や数、患者の体調・体力など悪条件が重なった場合は死に至ることもある。

それゆえ、学校給食や食品工場などでは検査が行われておりその項目の1つが一般生菌数だ。同検査項目は、食品の細菌汚染レベルを評価する重要な指標である。ところが、現在の検査方法は寒天やシート状の培地に形成されたコロニーを数えることで測定を行うため、結果が出るまで2日を要してしまう。そのため、商品の出荷後にならないと判明しないという致命的な課題を抱えていた。そこで、より確実に食中毒を防ぐため、出荷前に結果を得られる迅速な検査技術の開発が切望されていたのである。

「テトラゾリウム塩」(MTT)は水に溶ける分子で、電圧を加えると還元されて電流を生じる性質を有する。また、MTTは細胞膜透過性にも優れており、生菌細胞内に侵入すると不溶性の「ホルマザン」に変化する。そこで研究チームは今回、そのような性質を活かし、食品サンプルから採取した懸濁液にMTTを加えた後、電圧を加えることで生菌細胞へ侵入せず懸濁液中に残存したMTTの電流応答から一般生菌数を測定する検査技術を開発することにしたという。

  • MTTの細胞への取り込みと細胞内でのホルマザンの生成の概念図

    MTTの細胞への取り込みと細胞内でのホルマザンの生成の概念図(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

顕微鏡を用いて懸濁液中の生菌を観察したところ、約40~50分でMTTが生菌細胞へ取り込まれることが判明。また、電流応答の測定にかかる時間は10分程度のため、計測時間を従来の2日間(48時間)から約1時間にまで大幅に短縮することに成功した。

今回の手法では一般生菌数を迅速に測定できるため、工場出荷前に食品の安全性を確認し、食中毒を予防することが可能になるとする。また、電気化学的な検査技術は装置の小型化に有利なため、ポータブルセンサの実現も期待されるという。研究チームは今後、測定条件の最適化やデバイスの作製など実用化を目指した研究を展開する予定とした。