目前に迫っているのが、改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)の完全施行、そして消費税インボイス制度の開始だ。多忙な業務の中、これらへの対応に苦慮している企業も少なくないかもしれない。しかし、トーマツ リスクアドバイザリー事業本部パートナーの佐藤肇氏は、DXを推進するにあたって「これはチャンス」だと言う。7月21日に開催された「TECH+セミナー 経理業務変革Day 2023 Jul. 法令改正に適した経理DX」に登壇した同氏は、この新制度をきっかけにDXを推進するため、経理がどのような意識を持ちながら対応していくべきかを解説した。
改正電帳法とインボイス制度に両軸で対応する
講演冒頭で佐藤氏は、電帳法と消費税インボイス制度の直近の動きについて説明した。まず電帳法については、当初は令和3年度改正電帳法として、2022年1月から電子取引のデータ保存義務化が決まっていたが、2年間の猶予措置が執られ、完全施行は2024年1月からとなった。内容についても、要件が緩和された点もいくつかある。優良な電子帳簿の要件を満たしていれば、過少申告の場合に課される加算税が5%軽減されるが、その優良な帳簿がこれまでの「全て」から「特定の記載事項に関わる帳簿」に限定されたことや、書類のスキャナ保存では解像度や大きさに条件がなくなり、入力者情報が不要となったことがある。また電子取引情報は保存要件が細かく定められているが、相当の理由があるなどの条件を満たせば保存要件に関わらずそのまま保存できることになった。
一方インボイス制度は2023年10月1日から開始されることが決まっている。請求書フォーマットの変更が必要となるのが大きいところだが、取引の中に電子取引が含まれている場合には、電帳法への対応も併せて検討しなければならない。つまりこの2つの新制度について「両軸で対応しなければならないところがポイント」だと佐藤氏は述べた。
インボイス制度の開始で必要になる対応とは
インボイス制度については、売り手側では請求書に登録番号や税率を記載することや、写しを保管するといった対応が必要になる。消費税の端数計算が明細単位ではなく、請求書単位で行わなければならないことには注意が必要だ。また買い手側では仕入先の登録状況のほか、請求書が適格請求書の正しいフォーマットであるか、計上額と請求額が一致しているかといった確認が必要になる。免税業者などについては最初の3年間は8割、その後3年間は5割の仕入税額控除ができるという経過措置も考慮しなければならない。