H-IIAロケット47号機が8月28日(月)、種子島宇宙センターより打ち上げられる予定だ。天候の悪化により、打ち上げは当初の予定よりすでに2日延期。残念ながら週末ではなくなってしまったため、現地で見ることを断念した人もいるかもしれないが、28日は快晴となる予報なので、綺麗な打ち上げが期待できるはずだ。
打ち上げを前に、本記事では、注目ポイントについてまとめておきたい。打ち上げを見るときの参考にして欲しい。
47号機の打ち上げはここに注目!
当然ながら、ロケットの打ち上げはいずれも重要なのだが、そのミッションによって、どうしても世間からは注目される場合とされない場合が出てくる。今回は、ロケット自体も、搭載される2機の衛星/探査機も、その全てが注目されるという意味では、かなりレアな打ち上げであると言えるかもしれない。
まずロケット側の注目点は、これが“再開フライト”であるということだ。この3月、H3ロケット初号機が打ち上げに失敗。問題が発生した第2段はH-IIAとの共通部が多く、H-IIAでも同じ問題が発生する恐れがあったため、H-IIAには無関係であることが分かるか、あるいは対策を行うまでは、H-IIAの打ち上げも止める必要があった。
その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は原因究明を進めるものの、調査は難航。徐々に絞り込みつつも、なかなか特定には至らなかった。ただ、打ち上げの停止期間が長引くと、日本の宇宙開発に大きな影響が出てしまう。JAXAとしては、H-IIAの打ち上げだけでも、早期に再開したいという事情があった。
そこで、H-IIAと共通する可能性のある要因がいくつか残っている段階で、その全てに対策を施すことを決定。種子島で保管中だった47号機の機体を改修し、準備を進めてきた。実施した対策の妥当性を確認するという意味で、H3ロケットにとっても、非常に重要な打ち上げなのである。
対策を施したのは、PNP(ニューマティック・パッケージ)とエキサイタスパークプラグという装置。打ち上げ前ブリーフィングにおいて、MHIの鈴木啓司・MILSET長は「定められた対策を確実に実施し、機体に組み込んでからの機能点検の結果も良好だった。自信を持って臨めると考えている」と述べていた。
続いて、ペイロード側の注目点である。まずX線分光撮像衛星「XRISM」は、2016年2月に打ち上げ、その1カ月後に通信が途絶したX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の後継機だ。事故の原因は、ソフトウェアのミスにより高速回転し、機体が破壊されたことだった。これについては、当時の記事を参照して欲しい。
XRISMは、ひとみの設計を最大限活用しつつ、短期間で開発。スラスタ噴射異常対策機能を追加するなど、ロバスト性が向上しており、もし誤噴射により回転が始まっても、自動で止めることができるという。
ひとみの観測はほんの短期間だったものの、それでも、その先を期待させるだけの成果を出しつつあった。XRISMで解き明かしたい“宿題”は山積しており、後継機の打ち上げは、日本のX線天文学の関係者にとっては悲願だっただろう。今度こそ、最後まで無事に運用できることを期待したい。
もう1つ搭載されるのは、小型月着陸実証機「SLIM」だ。SLIMが狙うのは、100mオーダーという高い精度での月面着陸。画像照合航法や2段階着陸方式によってこれを実現し、「降りやすいところに降りる」から「降りたいところに降りる」への変革を目指す。
近年、各国の月面探査が活発になってきている。直近でも、ロシアとインドが月面着陸を実施。ロシアは失敗したものの、インドは成功し、旧ソ連、米国、中国に続き、世界4カ国目の月面着陸成功となった。SLIMは2024年1月~2月頃に実施する見込みで、成功すれば、日本は5番目の国となる。
またSLIMには、ユニークな2台の小型ローバー「LEV」も搭載される。LEV-1は、跳躍で移動。LEV-2(SORA-Q)は、球形から2輪型ローバーに変形する。どちらもカメラを搭載しており、どんな映像が届くのか非常に楽しみ。着陸に成功すれば、これが日本初の月面ローバーとなるはずだ。
SORA-Qと一緒にまわる種子島
最後にオマケとして、現在の種子島の様子を写真で紹介しよう。今回は、せっかく種子島に行くということで、タカラトミーから、SORA-Qの市販版である「フラッグシップモデル」をお借りした。あちこちで一緒に記念撮影をしてみたので、ご覧いただきたい。