グーグル・クラウド・ジャパンは8月22日、生成AIに関するハイブリッドイベント「Generative AI Summit」を開催した。同イベントでは、Googleが開発したLLM(大規模言語モデル)である「PaLM(パーム)」の活用例や、同社が提供する生成AIアシスタント「Bard(バード)」などの生成AI関連サービスを企業で活用する際のポイント、生成AIを利用したアプリケーション開発例などが紹介された。

そのうち、「Duet AIがもたらす新たな働き方の世界」と題したセッションでは、2023年5月に開催された開発者向けイベント「Google I/O」で発表された「Duet AI for Google Workspace」の活用シナリオがデモとともに紹介された。

スプレッドシートに複数人が関わるプロジェクト管理表を生成

Duet AI for Google Workspaceは、Google Workspaceで提供するさまざまなアプリケーションに生成AIを適用させた機能を提供する新サービスだ。今回のイベントでは、サービスの一般提供時期や提供価格は発表されなかった。

なお、2023年6月8日(米国時間)には同社のブログにて、大規模企業向けの「Duet AI for Google Workspace Enterprise」のリリースが発表されており、そちらは2023年中にGoogle Workspaceが販売されているすべての地域で一般提供を開始する予定としている。

  • 「Duet AI for Google Workspace」は、Google Workspaceのアプリケーションに生成AIを利用した機能を組み込んだ新サービス

    「Duet AI for Google Workspace」は、Google Workspaceのアプリケーションに生成AIを利用した機能を組み込んだ新サービス

セッションに登壇したGoogle Cloud カスタマー エンジニアリング Google Workspace スペシャリストの土屋泰之氏は、「Google Workspaceは人々のコミュニケーションとコラボレーションを支えるプラットフォームだ。産業・職種によってさまざまな(Google Workspaceとの)タッチポイントがあると思うが、ホワイトカラーのビジネスパーソンの仕事ではある程度タッチポイントが共通している」と述べ、代表的な5つのタッチポイントにおけるDuet AI for Google Workspaceの活用例を紹介していった。

  • Google Cloud カスタマー エンジニアリング Google Workspace スペシャリスト 土屋泰之氏

    Google Cloud カスタマー エンジニアリング Google Workspace スペシャリスト 土屋泰之氏

タッチポイントの1つである「メールの文章や書類の作成」では、文章作成を支援する「Help me write」が紹介された。同機能はGmailやGoogleドキュメントに実装され、プロンプトに数単語を入力することで文章のドラフトを作成することができる。文章を簡略化したり、箇条書きにしたりと文章のスタイルを変更するほか、文章のトーンを「カジュアル」や「フォーマル」に変更できる。モバイル版アプリケーションでも同機能は利用可能だ。

  • 「Help me write」のデモ。「夏のキャンペーンのセールストレーニング計画」と記入し、文章のドラフトを作成。文章の一部を箇条書きに変更した

    「Help me write」のデモ。「夏のキャンペーンのセールストレーニング計画」と記入し、文章のドラフトを作成。文章の一部を箇条書きに変更した

「プレゼン資料の作成」では、Google スライドに実装される「Help me visualize」が紹介された。同機能では、欲しい画像に関連する単語をいくつか入力することで、スライドにオリジナルの画像を生成できる。画像は一度に複数生成され、「Photography」や「Cyberpunk」など画像のスタイルも変更できる。

イベントのデモでは、「A grass mower on a green lawn(緑の芝生の上の草刈り機)」とプロンプトに入力し、スケッチ画のようなタッチの画像を生成した。

  • 「Help me visualize」のデモ

    「Help me visualize」のデモ

「プロジェクトプランニング」では、Googleスプレッドシートに実装される「Help me organize」が紹介された。同機能では、プロジェクトの内容やスプレッドシートで管理したい計画などをプロンプトに入力することで、プロジェクト管理のための表の雛形を自動的に生成できる。

同機能のデモでは、「プロダクトマネージャー、コミュニティマネージャー、マネージャーが関与するデジタルマーケティングに重点を置いた4週間の詳細な製品計画」と英語でプロンプトに入力することで、参加者やステータスをプルダウン選択できる表が生成された。

  • 「Help me organize」のデモ

    「Help me organize」のデモ

Google Chatとのやりとりでアプリケーションを開発

「アイデアの具現化(アプリの開発)」では、ノーコード開発プラットフォームの「AppSheet」で利用できる生成AI機能「Duet AI for AppSheet」が紹介された。

同機能では、「Appsheet for Google Chat」というAppSheet上に設けられたDuet AIのプロンプトから、自然言語による対話を繰り返すことでアプリケーションを開発するほか、アプリケーションのアイデア出しやカスタマイズが可能だ。開発されたアプリケーションは許可されたポリシーの範囲内で確認・調整し、ユーザーを限定してアプリケーションを公開できるという。

今回のセッションでは、「監査を行った社員が、必要項目とともに従業員情報も記録できるアプリケーション」の開発デモが紹介された。

プロンプトで指示を出すとドラフトとなるアプリケーションが生成され、スマートフォン、PC、タブレットからUIを選択できる。デモではスマートフォンを選択したうえで、監査実行者の写真を撮影・追加するフォームや、Eメール入力を必須とする仕様にするなど追加の開発指示がチャット形式で行われ、ものの数秒で実装されていった。

  • 「Duet AI for AppSheet」のデモ。チャット形式でプロンプトに指示を出すことで、写真を撮影するためのフォームが追加された

    「Duet AI for AppSheet」のデモ。チャット形式でプロンプトに指示を出すことで、写真を撮影するためのフォームが追加された

「Web会議に参加」では、Google Meetに実装される機能が紹介された。Duet AIが活用される新機能としては、例えば、オンライン会議参加者のカメラ映像の画角サイズとレイアウトの自動変更や、会議で話された内容を基にした議事録、タスクリスト、サマリー動画の生成、リアルタイム翻訳などが挙げられた。

土屋氏はセッションの最後で、「Google Workplaceの主役は過去から一貫して人間で、ビジネスパーソンが中心となる。今後、どんなテクノロジーが生まれたとしても、それはあくまでも脇役だ。こうしたアプローチは今後も変わらない。本日紹介した内容が、将来の働き方のヒントになれば幸いだ」と締めくくった。