産業技術総合研究所(産総研)は8月21日、魚肉の鮮度をニオイから判定するセンシング技術を、ブリをモデルに開発したことを発表した。
同成果は、産総研 極限機能材料研究部門 電子セラミックスグループの伊藤敏雄主任研究員、同・崔弼圭研究員、同・増田佳丈研究グループ長、北海道立工業技術センター(HITC) 研究開発部 食産業支援グループの吉岡武也専門研究員、同・緒方由美研究主査、同・研究開発部 ものづくり支援グループの菅原智明研究主幹らの共同研究チームによるもの。詳細は、8月23日~25日に東京ビッグサイトで開催される「第25回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」における鮮度流通技術実証コンソーシアムの出展ブースにて発表が行われる予定だ。
日本の産地・消費地市場には、魚の品質を経験と感覚で判定する“目利き”がいるが、海外には少ないため、生食用と加熱用を現地で区別するのは難しいのが現状だ。日本の水産物の輸出量を拡大させるには、品質を客観的に保証する指標と、その測定方法が必要と考えられている。
生鮮水産物の科学的な鮮度指標のうちで最も一般的なものに「K値」があるが、その導出には少なくとも数時間を必要とする。そのため、流通現場で迅速に鮮度状態を見える化する測定デバイスが求められていた。
産総研は、揮発性有機化合物向けの半導体式センサ素子を用いて、ニオイを計測するポータブル測定器をこれまで開発してきた。同測定器は、複数個の半導体式センサに、産総研が開発した湿度の影響を受けにくいバルク応答型センサを加えることで、高湿度下でのニオイの識別能力を飛躍的に向上させることにも成功している。
そして今回の研究では、魚肉のニオイを定量的に分析した結果に基づき、模擬の鮮度指標ガス(以下「指標ガス」)を調製し、ポータブル測定器の学習データの取得に活用したという。
魚肉の入荷直後と生食(0℃保管で5日経過)、加熱調理で可食(0℃保管で11日経過)、腐敗(30℃保管で1日経過)の目安となる4つの鮮度状態における魚肉のニオイ成分をサンプリングし、その分析が行われた。その結果、養殖ブリのフィレの4つの鮮度状態からは、合計27成分もの化学物質が検出されたとする。しかし、そのすべてを用いて魚肉のニオイを再現するのはコスト的に困難なことから、今回は、同族の化学物質には類似するセンサ応答を示す半導体式センサの特徴を活かし、各族の代表的な成分4種類で濃度比を調製して指標ガスにしたとする。