旭化成は8月21日、同社子会社のCrystal ISが4インチ(100mm)の窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板の製造に成功したことを発表した。

  • Crystal ISが量産を開始している2インチ基板と、今回製造された4インチのAlN単結晶基板

    Crystal ISが量産を開始している2インチ基板(左)と、今回製造された4インチのAlN単結晶基板(右)(出所:旭化成)

Crystal ISは、1997年にAlN基板を開発するスタートアップとして設立され、現在は2インチ基板を用いて、殺菌用途向けの「Klaran(クララン)」、分析用途向けの「Optan(オプタン)」といったUV-C(深紫外線) LED製品を製造している。同社の主力製品であるKlaranは、260nm~270nmの殺菌に理想的な波長を出力でき、殺菌用途を中心にさまざまな場所で利用されているという。

Crystal ISが製造するAlN基板は、欠陥密度が低く、紫外線透過性が高く、不純物濃度が低いという特徴を持ち、これらの特徴を活かしてUV-C LEDでの活用が進められてきた。また、非常に広いバンドギャップエネルギーを持つAlNは、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも電力損失が小さく、耐圧が高くなるポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れた次世代パワーデバイスへの適用や、RF(高周波)アプリケーションへの展開も期待されているという。

AlN基板の製造には、2000℃以上の高温に至る昇華炉内部において精緻な温度コントロールが必要であり、これが基板の大口径化における最大の課題となっていた。Crystal ISは、創業以来蓄積してきたノウハウを活用して、これまでにもAlN基板の大口径化を複数回実現し、現在は2インチ基板を年間数千枚規模で製造している。そして今回の4インチ基板を商業化できれば、1枚あたり4倍もの大面積化により各種デバイスを製造できるようになり、生産能力や生産効率の大幅な向上に貢献できるとする。

なお、今回同社が製造した4インチ基板は、その面積の80%以上が使用可能だとしているが、2023年度中に使用可能領域を99%以上にすることを目指し、さらなる改善を続けていくという。

Crystal ISは、今回の大口径化により、同社が保有するAlN単結晶成長プロセスが、今後も拡大が予想される需要に応えうるスケーラビリティを持つことを示すとする。また今後は、次世代パワーデバイスへの展開を見据え、AlN基板の外部販売に向けた活動も強化していくとしている。