一橋大学ビジネススクール 客員教授であり、京都先端科学 大学教授の名和高司氏は、“10X”と呼ばれる非連続で飛躍的な成長をどのように実現するかが、パーパス経営の課題だと言う。8月2日~18日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 for Leader DX FRONTLINE ビジョンから逆算する経営戦略」に同氏が登壇。パーパス経営のためのイノベーションの進め方やその考え方について解説した。
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パーパスは手の届かないような高いところに置く
講演冒頭で名和氏は、デジタルによる変革では、まずパーパスを高いところに置くことが重要だと述べた。パーパスとはMTP(Massive Transformative Purpose)と呼ばれるもので、簡単に手の届かないような、従来の10倍(10X)くらい高いところに置くと、デジタルを使いこなす必要が出てくる。その上で、DX1.0から3.0までの3つのDXでそこに近づいていくことがデジタル変革となるという。
DX1.0では創発型の組織が理想形
DX1.0とは自社改革のことで、ここでは組織のかたちがどう変わるかが重要となる。変化には規模と範囲、そしてスキルとスピードの2方向があるが、理想的なのは、この両方向がどちらも満足できるような創発型と呼ばれるかたちだ。自律しつつ、それぞれが組み合って関係性をつくるこのかたちが、イノベーションを起こせる組織となる。2つの方向がつながるためのマグネットの役割を果たすのがパーパスであり、そのためには魅力的なパーパスを掲げる必要がある。
創発型の組織では、イノベーションは中央ではなくエッジ、つまり周辺から起こる。周辺とは現場のことで、現場は情報の波打ち際となるためさまざまな揺らぎがある。その揺らぎをつないでずらし、大きく地殻変動させていくことがイノベーションにつながるのだと名和氏は言う。企業で言えば、揺らぎは現場、つなぎとずらしが本社の役割だ。現場のさまざまな揺らぎの中で筋が良いものを本社が見つけてずらしていくことで、イノベーションがスケールしていくことになる。