肌本来の機能を高めることはもちろん肌のストレスになるものを排除した「無添加」の化粧品にこだわるファンケル。同社では、10年以上取り組んでいる角層バイオマーカー研究において美肌酵素「アルギナーゼ1」が肌の老化を抑制するために重要であることを発見し研究を続けてきた。そうした中、キリンとの共同研究において、キリンが保有している「白麴菌」に含まれる成分「14-デヒドロエルゴステロール」(14-DHE)が「アルギナーゼ1」を増加させることを発見したという。
今回はこの「白麹菌」と「アルギナーゼ1」についての話題を中心に、肌が老化していく仕組みや肌を守る行動について、ファンケル総合研究所のシニアフェロー 榎本有希子研究員にお話を伺った。
肌の老化に深く関わる糖化とアルギナーゼ1
「糖化」とは、身体の中でタンパク質と余分な糖分が結びつくことでタンパク質が劣化し、老化物質である「糖化最終生成物(AGEs)」を生成する反応のことをいう。
肌細胞の中で糖化が起こると、AGEsが肌へのダメージを引き起こすシグナルを発生する「終末糖化産物受容体(RAGE)」に作用し、肌細胞が正常に働きにくくなるとのこと。RAGEは言わば「糖化スイッチ」のようなもので、AGEsが増加すると肌のあらゆるところで「糖化スイッチ」がオンとなり、シミやシワ、黄ぐすみが目立つようになるのだ。
この糖化は、食生活の乱れにより血糖値が高い状態が続くと加速すると言われており、加齢とともにAGEsは蓄積されていくのだという。
また、肌の老化は糖化のほかにも、加齢による代謝の低下をはじめ、紫外線や乾燥、花粉など外的な刺激からも引き起こされる。さらに、たばこの煙や自動車の排気ガス、ブルーライトも肌が酸化してしまう要因であるとし、日常的に何気なく過ごしている中でもいたるところで肌はストレスを受けているとする。
そうした中でファンケルが発見した美肌酵素アルギナーゼ1は老化を加速させる「糖化スイッチ」を増やさず、かつ、スイッチを押させない働きを促すことで、糖化によるダメージから肌を守ってくれるという。
白麴菌が肌にもたらす効果と仕組み
では、この度なぜ白麴菌に着目したのか?それは、白麴菌の中にある白麹ステロール(14-DHE)がファンケルでアルギナーゼ1を増やす活性を見出した化合物の構造と似ていたとともに、14-DHEは油にとけやすい性質を持つため飲料とは異なって化粧品で活用できるかもしれないとのことで共同研究に至ったとする。
アルギナーゼ1は保湿効果、抗炎症、抗酸化、以外に抗糖化の効果があることをファンケルで発見した酵素であり、一般的に個々人の細胞内に存在している酵素だという。しかし、人によって保持している量が異なるほか、肌細胞の良好な状態を保っておかなければ量を保つことは難しく、年齢関係なく紫外線などの外的な刺激で減ることもあるとのこと。そのため、アルギナーゼ1の量を維持するには相当な努力が必要なのだ。
そこでファンケルは、白麹菌に含まれる14-DHEを培養したヒト表皮角化細胞に添加し、アルギナーゼ1の量を測定した実験を実施。結果、14-DHEを添加していない細胞のコントロールと比較して、14-DHEを添加した細胞でアルギナーゼ1の増加を確認したという。また、50歳以上の女性が14-DHEを含んだ美溶液を4週間連用する実験を行った結果、皮膚のアルギナーゼ1の増加を確認したとともに、シミやシワ、黄ぐすみの軽減のほか、ハリが現れ肌のキメも細かくなる効果が得られたという。
日常生活の中で肌を守るには
加齢とともに糖化のリスクが高まる中、糖化から肌を守ってくれるアルギナーゼ1と、その活性を高める白麴菌。
では、我々が生活の中で肌を守るために意識したほうが良いことは何があるのだろうか?
まず、老化を進めてしまう刺激に対して肌を守るには保湿が大切であると研究員の方は語る。なぜなら、保湿をすると肌のバリアが強くなるため外からの刺激を受けにくくなるからとのこと。
また、内から守るだけでなくそうした紫外線や大気物質などの外からの影響を受けないよう、我々自身も日焼け止めや日傘、帽子などで物理的に肌を守ることも大切であり、酸化を加速させないことも重要だとした。もし可能であればビタミンCやビタミンEを摂取すると、肌にもアルギナーゼ1にも良い効果があるためおすすめとのことだ。
さらに、糖化が進まないよう食生活にも気を付け、糖質や脂質、また見落とされがちである果物などは適切な量を摂取するのが望ましいという。
ファンケルは今後、この白麴菌を化粧品だけでなく内外で応用できるよう研究を進めたいとしている。