東京商工リサーチ(TSR)が8月17日に発表した「2023年度『賃上げに関するアンケート』調査」の結果によると、2023年度の賃上げは84.8%の企業が実施または実施予定であることが分かった。コロナ禍(新型コロナウィルス(COVID-19)感染症の感染拡大)前の水準を超え、2016年度以降の8年間では最大となった。
2023年度に賃上げを実施したかを聞くと、84.8%の企業が実施したと回答しており、2022年度の82.5%を2.3ポイント上回った。
企業規模別に賃上げの実施率を見たところ、大企業が89.9%、中小企業が84.2%で、規模による差は5.7ポイントだった。2022年度は大企業88.1%、中小企業81.5%で、6.6ポイントの差であり、2023年度は格差が縮小した。
産業別では、賃上げを実施した割合が最も高かったのは製造業の88.4%であり、以下、建設業(88.0%)、卸売業(86.9%)が続く。それぞれ2022年度は87.2%、83.7%、84.5%であり、いずれも賃上げ実施率が上昇している。
賃上げを実施した企業にその内容を尋ねたところ、最も多かったのは定期昇給で75.3%に上る。以下、ベースアップ(56.4%)、賞与(一時金)の増額(43.3%)、新卒者の初任給の増額(23.5%)と続く。
定期昇給は2022年度の81.0%を5.7ポイント下回った一方、ベースアップは同42.0%から14.4ポイント増と大幅に上回った。
規模別に見ると、新卒者の初任給の増額は大企業の38.7%に対して中小企業は21.4%であり、17.3ポイントの差があった。初任給の差が拡大すると、中小企業の今後の新卒採用への深刻な影響が懸念されると同社は指摘する。
賃上げ実施企業に賃上げ率を尋ねたところ、全体での最多は3%以上4%未満の27.7%であり、以下、5%以上6%未満(20.2%)、2%以上3%未満(16.1%)と続く。
連合の2023年春闘では定昇相当分を含む5%程度の賃上げ方針が示されたが、賃上げ実施企業のうち5%以上の賃上げ率を達成したのは36.3%に留まっている。
企業規模別では、賃上げ率が5%以上だったのは大企業の28.7%に対し、中小企業では37.0%で8.3ポイント上回った。
産業別で賃上げ率5%以上の割合が最も大きいのは、金融・保険業の66.6%であり、最低は運輸業の29.4%だった。