都営大江戸線・蔵前駅のA5出口を出て左に進み、すぐ角のコンビニを左に曲がった道を1分ほど歩くと、そこには一風変わった書店がある。書店の名前は「透明書店」。2023年4月にオープンしたばかりで、クラウド会計ソフト大手のfreeeが会社を設立し運営している書店だ。
透明書店は「すべてを透明にしていく本屋」をコンセプトにしており、月々の売上から、「従業員を増やした」「備品のための経費が足りない」「棚の向きを変えた」といった日々の施策や出来事まで、包み隠さずオープンに発信している。
7月18日に公開された同社の公式ブログによると、初月の売上高(4月21~30日までの8営業日)は約130万円の黒字で、営業利益は約149万円の赤字だった。1500万円かかった初期費用の内訳も詳細に公開しており、本当にすべてをさらけ出している。
また、透明書店にはディスプレイ上で対話型の接客をする副店長の「くらげ」がいる。freeeおなじみの青いつばめではなく、くらげだ。このくらげには米OpenAIが提供する生成AI「ChatGPT」が搭載されており、会話を通じてその人にあった本をおすすめしてくれたり、その日の売上を教えてくれたりする。
SaaSを手がけるIT企業が、なぜ「アナログ回帰」ともいえる書店経営に挑戦するのか。また、これまでの経営で見えてきたこととは。透明書店 共同創業者の岩見俊介氏に話を聞いた。
百聞は“一体験"にしかず
なぜ書店経営に参入したのでしょうか。
岩見氏:ユーザーに対する理解をさらに深めたいからです。freeeが提供するサービスは、個人事業主やフリーランスといったスモールビジネス向けのものが多く、中小企業向けにバックオフィス業務を支援するサービスもたくさんあります。