シャープは8月7日、同社の創業111周年記念イベント「SHARP Tech Day」を11月11日に開催するにあたり、先行イベントとして昨今産業界で注目を集める「半導体」をテーマとした「SHARP Tech-Forum」を開催した。

同フォーラムにて、経済産業省(経産省) 商務情報政策局 情報産業課長の金指壽氏が登壇し、「グローバル時代を勝ち抜く半導体産業戦略の展望」をテーマに日本における半導体の政策展開についての説明を行った。

  • 経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長の金指壽氏

    経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長の金指壽氏

まず、金指氏は国内の半導体政策において「スピード感」と「継続性」を意識して進めていると説明。その中で、日本の半導体産業復活の基本戦略として、ステップ1「IoT用半導体生産基盤の緊急強化」、ステップ2「日米連携による次世代半導体技術基盤」、ステップ3「グローバル連携による将来技術基盤」で展開していくとする。

  • 日本の半導体産業復活の基本戦略

    日本の半導体産業復活の基本戦略

ステップ1「IoT用半導体生産基盤の緊急強化」

ステップ1の話の中では、ソニーセミコンダクタソリューションズとデンソーが少数株主として参画しているTSMCの日本での製造子会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM) 」と、TSMCのロジック半導体技術について例を挙げ、2022年6月17日付で最大助成額4760億円が支援されたことが述べられた。JASMの第1工場は2024年の年末ごろに稼働予定であり、「建設の現場の方々に多大なるご協力をいただいている」と金指氏は語った。

  • 先端半導体の製造基盤の確保について

    先端半導体の製造基盤の確保について

他にも先端半導体の製造基盤整備への投資判断を後押しすべく、5G促進法やNEDO法を改正し、令和4年3月1日に施行。2022年9月までに先端半導体の生産施設の整備および生産を行う計画に基づき、経産大臣による認定を3件実施し、令和4年度補正予算では4500億円の基金積み増しを実施したという。

また、こうした半導体チップメーカーに対する支援に加えて、「足元では製造装置や部素材の需要も確実に伸びていく。融資国や融資地域が関係するサプライチェーンに対し日本が持っている技術をベースにした供給責任を果たしていくことを国としても応援していきたい」と述べ、装置や部素材についても順次支援を展開していくと説明した。

ステップ2「日米連携による次世代半導体技術基盤」

ステップ2ではRapidusの話題を中心に、2022年度時点で予算700億円、2023年度追加で2600億円の予算が配分されたことをはじめ、IBMのパートナーとして、米ニューヨーク州アルバニーにある「Albany Nanotech Complex」に対する研究員の派遣や、imecのコアプログラム参加などの事例を説明。Rapidusが狙うマーケットを意識した生産プロセスの構築が具体的なものとして進められているとした。

  • Rapidusの取り組みについて

    Rapidusの取り組みについて

また2023年5月18日、半導体や次世代コンピューティング分野の海外企業トップとの意見交換会が官邸で開催され、各社から前向きな取り組みの意思表明があったと共に、岸田首相からも引き続き半導体産業について支援に取り組んでいくとの発言があったことも強調された。

ステップ3「グローバル連携による将来技術基盤」

ステップ3では、G7についても触れられた。2023年に開催されたG7は初めて「経済安保」が議論された歴史的な回だと同氏は語り、世界の中で決して内向きにならないよう理念を共有できる国とのパートナーシップを拡大していき、サプライチェーンを強化していきたいとした。

その中で、日本はもちろん海外との連携を行い双方向での活動連携を目指すとし、米国や中国、台湾や韓国の政策動向についても言及。近年はインドの動きも注目すべきだとし、今後連携を目指すとした。

また、半導体の政策展開において、半導体の使い方をどう広めていくのかも念頭に置くことが重要だとし、「最終的に、半導体産業のデジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーションにつなげられれば」と金指氏は半導体政策の今後を語っていた。