大日本印刷(DNP)と愛媛大学は、タイなどの養殖魚の飼料に必要なたんぱく質(プロテイン)源として、昆虫のミールワームの飼育工程の自動化・効率化を目的とした共同研究を開始したことを発表した。
世界的な人口増加や経済発展を背景に、世界の食料需給量は2010年から2050年にかけて1.7倍(58.17億トン)になると予測されている。これに伴い、水産物の需要も拡大すると指摘されているが、その一方で漁船漁業による生産量は頭打ちになっており、養殖業への期待が大きくなっているという。
現在、養殖魚の飼料としては主に魚粉が使用されているが、その原料の多くがカタクチイワシなどの天然資源に依存しているため、サステナブルな飼料とは言えず、また近年は魚粉価格の高騰やサプライチェーン上のリスクといった課題も表出している。
そこでDNPと愛媛大は今回、持続可能な食料供給の実現を目指し、養殖魚の栄養源となる昆虫プロテインを国内で生産するための自動飼育装置の開発に着手したとする。なお飼料用昆虫プロテインは、植物性やほかの動物性たんぱく源に比べて栄養価が高く、その市場規模は2050年までに24.2兆円にまで拡大すると予測されている。
両者が飼料用昆虫プロテインとして自動飼育装置の開発に取り掛かるのは、チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫であるミールワームだ。終齢幼虫の体長が20mm程度の同種は、雑食性で繁殖力が高いという特徴をもつ。またほかのたんぱく源に比べて、アミノ酸や不飽和脂肪酸を多く含んでおり、栄養価も高いという。また飼育コストの面では、畜産物などに比べて少ない土地や水で育てることができる上、温室効果ガスの排出も少ないため、環境負荷が低いとする。
今回の共同研究では、DNPが自動飼育装置の開発製造を担い、昆虫の養殖飼料への利用技術の開発に関する基礎研究の実績がある愛媛大学が、その実用化に向けて協力することとなる。実験では、愛媛大に新設した実験室で育てたミールワームをプロテイン源として与えた養殖魚と、従来の飼料を与えた養殖魚において、成長速度や免疫力を比較するとのこと。また自動飼育装置の開発に際して、2024年3月を目標に、ラボ規模の施設の建設を目指すとしている。
さらに将来的には、昆虫プロテインとしてのミールワーム飼育工場を立ち上げ、養殖魚の飼料として年間100トンのミールワーム粉末を水産養殖市場に提供することで、国内生産性の向上および食のバリューチェーン安定化に貢献し、食料不足という社会課題の解決に取り組むとした。