アドビは8月9日、国内のアドビ顧客体験管理ソリューションのユーザーを含む経営層やマーケターを対象に実施した、「マーケティング実態調査」の結果を発表した。同日に開催されたオンライン説明会では、新型コロナウイルスの規制緩和による市場動向、その中でのマーケティング施策の変化などが紹介された。
現在、さまざまな領域で生成 AIの活用が検討・開発・実装されており、マーケティング領域でも注目を集めている中で、今回の調査では、国内企業における生成AI導入の現状やマーケティングの課題などが明らかになったという。
説明会には、アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング本部 マネージャー兼プロダクトエバンジェリストの安西敬介氏が登壇し、調査の結果を説明した。
本稿では、その一部始終を紹介する。
生成AIは顧客体験管理を実現するための副操縦士
アドビは、顧客とのエンゲージメントをより深めるために「顧客体験」は重要であり、企業はそれを管理する必要があると見ている。また、それらを管理するプラットフォームが求められているという。
「Customer Experience Management(顧客体験管理)が求められている中、これを実現するキーとして、私たちは2つの考えを持っています。それが、『Personalization at Scale』と『Content Supply Chain』です」(安西氏)
「Personalization at Scale」とは、パーソナライゼーションを大規模に展開していくことを指す。
顧客体験の価値の向上を考えた際、パーソナライゼーションは切っても切り離せない要素であり、この部分を大規模に展開していくことによって、今までにないその人にあったコミュニケーションを行えるようになることを示している。
「Content Supply Chain」は、より素早いコンテンツ投下を実現するために複雑化されたフローを整備して、交通整理を行うことを意味している。
「今後は、この2つのキーの他に『副操縦士(Copilot)』として生成AIを効果的に活用することも非常に重要になってきます。そのため今般、国内のアドビ顧客体験管理ソリューションのユーザーを含む経営層やマーケターを対象に、国内企業における生成AI導入の現状やマーケティングの課題などを明らかにする調査を行いました」(安西氏)
「生成AIに興味はあるが具体的な議論には至っていない」35%
今回の調査によると、生成AIの利用傾向として「すでに活用している」が4%、「試験的に一部で活用している」が13%と、17%が活用していると回答したという。
「活用に向けて社内で議論を進めている」と回答した12%の意見も合わせると、約30%が積極的に採用に取り組んでいることが判明した。
また、アドビユーザーの回答者は非ユーザーと比較して、生成AIを活用しているとの回答が5ポイント高く、22%となったという。ここから安西氏は、アドビユーザーの積極的な生成AIの活用の取り組みが感じられると語った。
また、興味はあるが具体的な議論には至っていないと回答した人は全体で35%に上り、今後、マーケティングに生成AIを活用する企業が増える傾向を示す結果となっている。
マーケティング関連業務において想定される生成AI活用機会としては、写真やイラストといった画像や、ビジネス文章、メールなどのテキストを含むコンテンツ作成を考えている回答者が86%となったという。この86%の内訳は「大量のコンテンツ制作」と回答した人が32%、「質の高いコンテンツ制作」と回答した人が53%となっている。
また、2023年のマーケティング施策は昨年対比で、「デジタルとリアル共に増加している」と回答した人は40%で、オムニチャネルの重要性が高まっていることが判明したという。
「『デジタルとリアル共に増加している』と回答した人は、『シームレスな連携を実現している』が10%、『一部を除き概ね連携できている』が16%、『部分的に連携できている』が47%と、オムニチャネルの重要性が高まっていることが分かる結果となりました。オムニチャネルには、73%の回答者が部分的な連携も含め対応しているものの、その一方で、71%が人数、能力といった人的リソースを課題と感じていることが判明しました」(安西氏)
今回の調査結果を受けて、安西氏は以下のようなコメントを述べた。
「今回の調査から、国内においてもコンテンツ制作をはじめ、さまざまなマーケティング業務で生成AIの活用を視野に入れている企業が多いことがわかりました。アドビは、生成AIを活用したサービス『Adobe Sensei GenAI』により、企業が、パーソナライゼーションの規模を拡大し、 Experience-Led Growth (エクスペリエンス主導の成長)を実現できるよう支援していきたいと考えております」(安西氏)