日本ガイシとリコーによる合弁会社のNR-Power Labは8月9日、2023年2月の設立から今日に至るまでのバーチャルパワープラント(VPP)事業に関する進捗説明会を開催。その中で、IoTスタートアップであるCollaboGate Japan、Sassorなどと連携し、分散型IDを活用した低コストかつ堅固なセキュリティを実現する独自のVPPシステムの構築を開始したことを発表した。

NR-Power Labは、再生可能エネルギー(再エネ)の発電や蓄電池への充放電、施設や家庭における電力消費などのさまざまなエネルギーリソースをデジタル技術で統合制御し、仮想の発電所のように機能させるVPPサービスをはじめ、さまざまな電力デジタルサービスの事業化を目指し、日本ガイシとリコーが出資する合弁会社として2月に設立された。

  • NR-Power Labの事業概要

    NR-Power Labの事業概要

  • NR-Power Lab設立発表会の様子

    NR-Power Lab設立発表会の様子

VPPを活用してエネルギーを有効に活用するためには、多様なエネルギーリソースへの対応力やポートフォリオを最適化するシステムが重要であり、AIなどの活用が進められている。またシステムの構築においては、信頼性が不可欠であるとともに、セキュリティ性能を含む運用コストの低減も求められるという。

そこでNR-Power Labは、近年注目が集まる分散型IDのプラットフォームを提供するCollaboGate Japan、エネルギーリソースの最適制御AIを提供するSassorという2つのスタートアップと連携を開始。NR-Power Labが中核となり、各社の知見や技術を活かした新たなVPPシステムの構築に着手した。

新VPPシステムでは、消費電力や発電力の予測をもとに、収益が最大化するポートフォリオになるよう、Sassorが提供するAI「ENES」によるエネルギーリソースの自動制御を行う。また、多様化が想定されるエネルギーリソースから提供されるデータについては、CollaboGate Japanの「NodeX(ノードクロス)」を活用したデータ伝送を行うことで、その把握の正確性を確保。これにより、従来の中央集権型システムで必要とされていた設備投資や人員を削減でき、信頼性の確保とコストの低減という両面でメリットをもたらすとしている。

  • NR-Power Labなどが目指すVPPシステムの概要

    NR-Power Labなどが目指すVPPシステムの概要

さらに、日本ガイシが保有する「NAS電池」をはじめとした蓄電池の制御技術、リコーが保有するブロックチェーン技術など、さまざまなIoT・デジタル活用ノウハウを融合させることで、これまでの電力ビジネスにとらわれない新たなサービスの実現を目指すとする。

なお、今回発表されたシステムの構築については2023年度内の完了を目指すとのことで、2024年度からは実機を用いた実証実験を行うという。同実証実験にはIHIやYAMABISHIなど8社が共創パートナーとして参画することが決定しており、そのうち北海道電力は、システム構築や実証におけるオブザーバーとして参加する。

  • 2024年度に予定されるVPPシステム実証実験の共創パートナーとその役割

    2024年度に予定されるVPPシステム実証実験の共創パートナーとその役割(出所:リコー)

これらの共創パートナーの探索について、NR-Power Labの中西祐一代表取締役社長は、「1回目の実証ということもあり、明確な特徴を持つ企業と協力することにこだわった」といい、オープンイノベーションの場としてより大きな価値を創出するために、さまざまな強みを融合させることができる環境づくりを意識したとしている。

  • NR-Power Labの中西祐一代表取締役社長は「新たなVPPシステムの開発に向けたさまざまな企業と協力していきたい」と語った。

    NR-Power Labの中西祐一代表取締役社長は「新たなVPPシステムの開発に向けたさまざまな企業と協力していきたい」と語った。

また今後の展望については、「VPPサービス市場や電力業界を牛耳るようなことは考えていない」との姿勢を強調し、「“力を出し合って新たなVPPシステムを作り上げていく”というコンセプトを大事にしていきたい」と語った。