東北大学と大手タイヤメーカーのブリヂストンは8月2日、タイヤを構成する主成分であるゴムのシミュレーション基盤技術について共同研究を始めたと公表した。
東北大側の共同研究の対応組織は、2020年8月に学内に設けた計測科学や計算科学などを高度に活用するソフトマテリアル研究拠点(拠点共同代表は寺内正己教授と陣内浩司教授)になる。このソフトマテリアル研究拠点は、ソフトマテリアルに対する計測科学と計算科学ソフトウエア系などの研究開発を、当該企業と共同開発する態勢を整えてきた組織であり、東北大の多元物質材料研究所と工学研究科に所属するソフトマテリアルを研究開発する教員・研究室などで構成されている。ソフトマテリアル研究拠点を設けた時に「企業との共同研究開発を進めて、ソフトマテリアル研究開発での社会貢献を図る」と宣言していた(図1)。
今回のブリヂストンとの共同研究開発では、「ゴムの分子・原子レベルでの計測と、物性の計算(シミュレーション)技術の向上を目指す」と解説している。同研究拠点が得意とする計測科学分野(マルチモーダル計測)では、これまではクライオ電子顕微鏡(Cryogenic Electron Microscopy)という透過型電子顕微鏡(TEM)にて、液体窒素(沸点は-196℃)で冷却した試料の観察画像を多数撮って、その多数の画像を平均化処理して、3次元画像化し、タンパク質などの組織を推定する手法によって成果を上げてきており、今回もこうしたクライオ電子顕微鏡の活用なども行われると推定される(注)。
注:2024年4月からの本格運用が予定されている次世代放射光施設(通称:ナノテラス)も、活用されるものと推察される
また、ソフトマテリアル研究拠点は計測科学分野(マルチモーダル計測)と同時に、「マルチスケール解析による計算科学を組み合わせて、高度な解析を実施する」とも説明している(図2)。計算科学などを駆使した、高度なコンピュータ解析を活用する模様だ。
なお、ソフトマテリアル研究拠点は「保有する計測科学と計算科学に、ブリヂストンが保有するゴムの知見を組み合わせることによって、ゴムの分子・原子レベルでの計測と、物性の計算(シミュレーション)技術を組み合わせて、革新的なゴムの材料開発で成果を上げる計画」と説明している。