シスコシステムズ(シスコ)は8月8日、記者説明会をオンラインで開催し、パートナーとの連携強化などサステナビリティへの取り組みをさらに推進するための戦略について説明を行った。併せて、データセンターとクラウド全体の構成、運用、分析を一元化しエネルギー効率を最適化する最新のソリューションなどを紹介した。

シスコは、2040年までにスコープ 1、2、3のすべてにおいて温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を公約に掲げている。目標達成に向け、同社はこれまでハードウェア製品の循環利用を促進するプログラム「Cisco Green Pay」や、リモート会議で発生するCO2排出量を追跡する新機能「Carbon Emissions Insights」などを発表している。

同説明会に登壇した代表執行役員社長の中川いち朗氏は、「世界中で定められている2050年までの目標を10年前倒しで達成していく。自社だけでなく、顧客やパートナー企業への支援プログラムも拡充させ、バリューチェーン全体でサステナビリティの取り組みを加速させていく」と、意気込みを述べていた。

  • シスコシステムズ 代表執行役員社長 中川いち朗氏

    シスコシステムズ 代表執行役員社長 中川いち朗氏

循環型経済を促進する3つのプログラム

同社が3月に発表した「Cisco Green Pay」は、シスコの循環型経済に賛同した顧客に、シスコ製ハードウェア製品の導入にあたって使用期間に応じてインセンティブを付与する特別ファイナンスプログラム。利用契約終了後にはシスコが無償で当該製品を回収し、シスコの循環型経済プログラムに基づいて処理されることを示す証明書を発行する。

3年(36カ月)から5年(60カ月)の支払い期間を設定し、ハードウェア部分には最大5%のインセンティブを付与する。利用契約終了時には、ハードウェア製品の返却または1年延長を選択でき、製品の返却に要するすべての集荷、運搬費用はシスコが負担する。

  • 「Cisco Green Pay」プログラム内容

    「Cisco Green Pay」プログラム内容

「ハードウェアの先行コストを最適化し、廃棄物の削減にもつながる取り組みだ。企業の環境や社会、ガバナンスに関する目標達成を支援していく」と、執行役員 クラウド・サービスプロバイダー アーキテクチャ事業担当の高橋敦氏は「Cisco Green Pay」について解説した。

  • シスコシステムズ 執行役員 クラウド・サービスプロバイダー アーキテクチャ事業担当 高橋敦氏

    シスコシステムズ 執行役員 クラウド・サービスプロバイダー アーキテクチャ事業担当 高橋敦氏

また、シスコは顧客だけでなくパートナー企業に対しても支援プログラムを展開していく。例えば、「Environmental Sustainability スペシャライゼーション」は、製品の回収と再利用に焦点を当てたプログラム。顧客が不要になった機器を100%回収し、回収後はリサイクル、一部は新製品の原材料として再利用する。アクセンチュアやリコージャパンなど、すでに38社の企業が賛同して同プログラムに参加しているという。

「ストレージなど、シスコ以外のベンダーが提供した機器でも回収できる。循環型経済は企業が使用済み製品をただ廃棄するのではなく、製品を再利用・リサイクル・再生することで実現する。パートナー企業とともに持続可能性について学んでいきたい」(高橋氏)

  • 「Environmental Sustainability スペシャライゼーション」には38社がすでに参画している

    「Environmental Sustainability スペシャライゼーション」には38社がすでに参画している

そして、新品同様の品質で再生された製品は、認定再生品に関するプログラム「Cisco Refresh」で提供していく。認定再生品は、予算やタイミング、サステナビリティに関する優先順位に応じて柔軟に代替手段を準備。「現在の環境とレガシーの環境の両方のニーズを満たす認定再生品を提供している」(高橋氏)とのことだ。

「シスコは再販売・再利用・リサイクルの比率を高めて廃棄物を極限まで削減する取り組みを続けており、直近のデータではシスコ製品のリユース・リサイクル率は99.9%を超えている」(高橋氏)

  • 認定再生品に関するプログラム「Cisco Refresh」概要

    認定再生品に関するプログラム「Cisco Refresh」概要

「測定できないものはコントロールできない」

一方、シスコはサステナビリティに対応するソリューションもいくつか提供している。

2023年夏に提供予定の「Carbon Emissions Insights」は、Webexによる会議で発生するエネルギー使用や関連するCO2e(二酸化炭素換算値)を米国環境保護庁(EPA)など主要な政府機関の定める算定式に基づいて推算する機能。排出量の時間経過に伴う変化やサステナビリティ目標に向けた進捗を確認でき、IT管理者はエネルギー使用の削減につなげることができる。

  • Carbon Emissions Insights(開発中のイメージ)

    Carbon Emissions Insights(開発中のイメージ)

他にも、データセンターやビル施設向けに、電力の可視化・管理、電力・冷却の効率化といった機能が備わったソリューションを提供している。加えて、IT体験を統一化する未来のインターネットや、産業別・業種別に特化したサステナビリティソリューションも提供する計画だ。

高橋氏は、「測定できないものはコントロールすることができない。2025年には世界で181ゼタバイトのデータが生成されることが予想され、また、世界のCO2排出量のうちビルと建物が占める割合は37%と試算されている。ネットワークは、エネルギー消費の最適化をはじめ、コストの削減、カーボンフットプリントの最小化、組織全体のエネルギー使用とエネルギーネットワークの監視を支援できる」と説明した。

さらにシスコは8月8日、サステナビリティに関するソリューションや支援プログラムを紹介する「サステナビリティ推進支援センター」を開設した。中川氏は「シスコ自身の取り組み事例も紹介していく。関連部門のスペシャリストを集め、横断的なチームで対応する。ぜひ広く活用していただきたい」と話した。