ルネサス エレクトロニクスは8月7日、セルラーIoT向け4G/5Gチップおよびモジュールプロバイダの仏Sequans Communications(シーカンス)の全株式を公開買い付けによって取得する旨の基本合意書を締結したことを発表した。

シーカンスは2003年に設立されたIoTデバイス向けに、チップセットやモジュールを設計・開発するファブレス半導体企業。同社とルネサスは2020年より協業しており、ルネサスの組み込みプロセッサやアナログ製品とシーカンスのワイヤレスチップセットを組み合わせたソリューションを、大規模IoTやブロードバンドIoT向けに提供してきた経緯がある。ルネサスの代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は、今回の買収について、「シーカンスとのパートナーシップを次のフェーズに進めるもの」と説明しており、IoTのアプリケーションを広くカバーするシーカンスのコネクティビティ技術を入手することで、進化する顧客ニーズに対応していくことが可能になるとしている。

今回の基本合意書に基づき、ルネサスは一定の条件のもと、シーカンスのADS 1株を3.03ドルとする現金による公開買付けを開始。この価格は、8月4日のシーカンスの終値に対して42.3%、過去12ヶ月間の出来高加重平均価格に対して7.7%、過去6ヶ月間の出来高加重平均価格に対して32.6%のプレミアムを付与しているとのことで、ルネサスでは約5200万ドルの純有利子負債を含めたシーカンスの企業価値を約2億4900万ドルと評価していると説明している。

なお、このルネサスによる公開買付けは、労使協議会との協議完了を経て、シーカンスの取締役会が、シーカンス普通株式およびADSの保有者に対して同公開買付けへの応募を推奨した場合に開始されるとしており、完了の前提についてルネサスでは、すでに保有するシーカンス株式を含め、完全希薄化ベースでシーカンスの発行済株式総数の90%以上に相当する株式の応募を受けることとしており、この取引は、税務上の取り扱いに関する税務当局への確認、必要な規制当局の承認の取得およびその他の一般的なクロージングの前提条件の充足を条件としている。

ルネサスによると、公開買い付けは2024年第1四半期までに、法人の国籍変更や関連取引は2024年第4四半期までに、それぞれ完了する予定で、この公開買付けが完了した場合、シーカンスは非公開会社となり、シーカンスのADSは非上場となるという。