米国半導体工業会(SIA)は、英国オックスフォードの多国籍マクロ経済調査・助言会社Oxford Economicsと提携して、米国が半導体技術者(半導体業界で従事するコンピュータサイエンティストを含む)の不足に直面しており、2030年までに6万7000人が不足すると予測されるという調査結果を発表した。
「CHIPPING AWAY: ASSESSING AND ADDRESSING THE LABOR MARKET GAP FACING THE U.S. SEMICONDUCTOR INDUSTRY(労働力不足:米国半導体産業が直面している労働市場ギャップの評価と対処)」と題されたこの報告書では、人材ギャップを埋め、半導体企業がすでに実施している労働力開発の取り組みを補完するのに役立つ一連の政策提言も行っている。
半導体需要は2030年以降に大幅に増加すると予測されており、半導体企業はそれに追いつくために生産とイノベーションを強化している。米国でも2022年にCHIPS法を制定しており、それにより次世代の半導体製造能力と研究開発のかなりの部分が米国に集中することが期待されているが、一方でそうした高度に革新的な半導体業界で必要なスキル、トレーニング、教育を備えた半導体労働者の需要も増加傾向にある。
実際、同報告書では、米国の半導体産業の労働力は、現在は約34万5000人ほどだが、2030年までに約11万5000人増の約46万人になると予測。このギャップを埋めるための行動を取らなければ、このうち6万7000人ほどが不足するリスクがあると指摘している。
この課題に対応する方法として、同報告書では米国の技術労働力を強化することを目指した以下の3つの推奨事項も示されている。
- 半導体製造やその他の先端製造部門の熟練技術者のパイプラインを拡大することを目的とした地域パートナーシップとプログラムへの支援を強化
- 将来の経済にとって重要な半導体産業や関連分野に必要不可欠な半導体エンジニアやコンピュータサイエンティストのために国内のSTEMパイプラインを拡大
- 高等学位を目指す海外留学生をより多く米国に招き入れる
2030年に不足すると予測される職種としては、約39%(2万6400人)が技術補助職、約41%(2万7300人)が技術職、約20%(1万3400人)がコンピュータサイエンティストであるとしている。半導体は現在および将来のほぼすべての重要なテクノロジーの基礎となるため、半導体業界におけるこうした人材のギャップを埋めることは、経済全体の成長とイノベーションの促進の中心となると同報告書では述べている。
なお、SIAの社長兼最高経営責任者(CEO)のJohn Neuffer(ジョン・ネイファー)氏は、「米国の半導体生産とイノベーションを再活性化するために巨額投資を行うのと併せて労働力の強化も必要である。SIAは政府とも協力して、業界の長年にわたる労働力育成の取り組みを基礎とする政策を推進し、米国のSTEM人材のパイプライン拡大を図るとともに、世界中からより多くの優秀な工学系留学生の米国への招聘を促していきたい」と述べている。