東京大学(東大)は8月4日、CDプレーヤーを含むデジタルオーディオプレーヤーで生じるデジタル→アナログ(DA)変換での「サンプリングジッタ」を、手軽に測定する新しい方法を提案し、その実証に成功したことを発表した。
同成果は、東大大学院 総合文化研究科の竹内誠助教、同・齋藤晴雄教授らの研究チームによるもの。詳細は、音という広範なテーマを扱う学際的な学術誌「The Journal of the Acoustical Society of America」に掲載された。
デジタルオーディオプレーヤーは、デジタル音楽ファイルを読み出し、再生音に対応するアナログ電気信号にDA変換をした上で出力を行う仕組みで動作する。デジタル音楽ファイルは、このデジタルからアナログへのDA変換過程が一定の周期で行われるという前提のもとで作成されている。しかし現実のデジタルオーディオプレーヤーでは、内部にある基準信号源の安定性などが原因となり、必ずしも一定周期でDA変換が行われていないという。このDA変換が行われるタイミングのズレが、サンプリングジッタである。
このDA変換が抱えるサンプリングジッタ問題のため、デジタルオーディオプレーヤーを用いて、12kHzの正弦波型のアナログ電気信号が出力されるように書かれた波形ファイルを再生させる場合、現実には、ゆがんだ正弦波型のアナログ電気信号が出力されてしまう。
従来、アナログ電気信号の正弦波からのゆがみは、「クロススペクトラム法」に基づく分析装置の位相雑音アナライザを用いて測定されてきた。ただし、音と同じ20Hz~20kHzの周波数帯域は電気的な雑音が多いため、市販されている装置は対応していなかったという。
音の周波数帯域に限定すれば、アナログ電気信号の測定器の代わりにリニアPCMレコーダで測定することも可能だ。リニアPCMレコーダは、音に対応するアナログ電気信号をデジタル信号にAD変換し、リニアPCMという形式で音声ファイルを作成する高性能な録音装置で、「デジタルオーディオレコーダ」とも呼ばれる。ただしリニアPCMレコーダ1台だけでは、録音過程のサンプリングジッタも記録波形に含まれてしまう。そこで研究チームは今回、リニアPCMレコーダを2台用いて、DA変換に伴うサンプリングジッタのみを測定したという。