日本ヒューレット・パッカード(HPE)は8月3日、今年6月に開催した年次カンファレンス「HPE Discover 2023」で発表されたEdge to Cloudプラットフォーム「HPE GreenLake」の新サービスに関する説明会をオンラインで開催した。
HPE GreenLakeのサービス体系をシンプル化
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 クラウドサービス事業統括本部長の吉岡智司氏は、Discover 2023を振り返り「当社は『Enterprise of the future』を戦略として掲げ、エッジセントリック、クラウドイネーブルド、データドリブンに注力している。今回のDiscover 2023ではHPE GreenLakeを中心にエッジ、ハイブリッドクラウド、AIに関してアナウンスされた」と述べた。
同社では、2013年ごろから従量課金やコンサンプションモデルをはじめとしたAs a Serviceモデルに取り組み、2019年にCEOのアントニオ・ネリ氏が同社製品のすべてをサービス(Everything as a service)で提供することを目標に定め、2022年にはその完了を宣言。2019年時点の総契約金額は28億ドル、2022年は83億ドル、そして2023年は110億ドルと右肩上がりに業績を伸ばしており、次のステージへ進む意欲を示している。
HPE GreenLakeはサービス体系をシンプル化しており、Flex SolutionsとPrivate & Hybrid Cloudに大別。Flex Solutionsは、Delivered as a serviceとしてカスタム可能なハードウェア構成に加え、今後モジュールを標準化し、さまざまなISV(独立系ソフトウェアベンダー)ソリューションにより、個別要件に対してモジュール提供を行う。
Private & Hybrid Cloudは、ハイブリッドクラウドサービスやクラウドベース管理などのSaaS(Software as a Service)、プライベートクラウド、AI、ML(機械学習)といった事前定義されたIaaS(Infrastructure as a Service)ソリューションで構成。
Discover 2023では「HPE GreenLakeプラットフォームの強化」「ハイブリッドクラウド戦略を支援するIaaS」「エコシステム拡大とクラウドサービスの拡充」の3つの観点から発表された。
HPE GreenLakeプラットフォームの強化
昨年に発表したHPE GreenLakeプラットフォームは、1つのコンソールからストレージ、コンピューティング、クラウド、ネットワークと、さまざまなサービスにアクセスすることでエッジからクラウドまでを管理するというものだ。
同プラットフォームの強化を目的に、今年3月にはSaaS型IT運用管理プラットフォームを提供するOpsRampの買収を発表しており、5月末に完了した。
吉岡氏は「OpsRampのイノベーションは継続しつつ、HPEの環境に取り入れていく。GreenLakeにおけるAIOpsの機能やIaaSプラットフォームの基盤、マネージサービスなど、さまざまな領域に技術を適用していく」と説明した。
また、2023年後半の提供開始を予定しているサステナビリティダッシュボードにもOpsRampの技術を活用し、他社のサーバやネットワーク機器などのカーボンフットプリントが可視化できる。
ハイブリッドクラウドを支援するIaaS
ハイブリッドクラウド戦略を支援するIaaSについては、まずはカンファレンスでも発表された大規模言語モデルのためのAIクラウド「HPE GreenLake for Large Language Models(LLMs)」が紹介された。
同社のスパコン「HPE Cray XD」をベースに、AIソフトウェアスタックを組み合わており、大規模言語モデル(LLM)をオンデマンドでトレーニング、チューニング、実装できる。 最初に提供するLLMは独Aleph Alphaの「Luminous」となり、他のAIパートナーも将来的に加わる。
提供は2023年後半に米国、2024年に欧州で開始されるが、それ以外の地域は未定となっている。吉岡氏は「これをもって、AIのIaaSに参入する」と力を込めた。
さらに、昨年発表したプライベートクラウド環境のHPE GreenLake for Private Cloud Enterprise」の拡充に加え、「同Private Cloud Business Edition」が発表された。
Private Cloud Enterpriseは、Amazon EKS AnywhereやRed Hat OpenShift Container Platformといったコンテナ基盤を拡充したほか、ISVソリューションを統合されたマーケットプレイスからクリックしてデプロイすることができる。加えて、ハイブリッド/マルチクラウド環境でのプロビジョニングから管理までを可能としている。
一方、Private Cloud Business EditionはVMwareとAWS(Amazon Web Services)との連携を意識した簡易的なプライベートクラウド環境となり、ハイブリッドクラウド環境のVM(仮想マシン)を管理できるクラウドコンソールとなる。
吉岡氏は「Private Cloud Enterpriseは、パブリッククラウドと同じように使うものではなく、お客さまでの管理、あるいはパートナーがマネージドサービスとして提供するもの」と話す。
エコシステム拡大とクラウドサービスの拡充
エコシステムの拡大では、AWS、エクイニクス、VMwareとのアライアンスを拡大。AWSとは前述したようにCloud EnterpriseがAmazon EKS Anywhereをサポートするほか、SaaS「HPE GreenLake for Backup ando Recovery」が従来からのAmazon RDSに加え、EKS Anywhere、EC2、EBSとサポート対象範囲を広げた。
そのほか、AWS Marketplace上でNonStopサーバ用の統合開発環境である「HPE NonStop Development Enviroment」、通信業界向け不正リスク管理ソリューション「HPE Fraud Risk Management」の提供が開始される。
エクイニクスとはGreenLake for Private Cloud Enterpriseと同Private Cloud Business Editionを、すぐに稼働できる状態とするため、同社のデータセンターに事前配備することで協業を拡大した。すでに世界7カ所でスタートし、日本は今後検討していく。
VMwareとは「HPE GreenLake for VMware Cloud Foundation」を発表し、GreenLake上でマルチクラウドプラットフォームのVMware Cloud Foundationが利用できるようにしており、ポートフォリオを拡充している。
クラウドサービスの拡充としては、ネットワークサービス「HPE GreenLake for Aruba Service Packs」において、データセンターに特化したネットワーク環境のサービスを追加し、フルスタックでネットワーク関連のAs a Service化を強化。HPE GreenLake for Backup and Recoveryでは、新たにMicrosoft SQLとAmazon RDSの環境をサポートしている。
吉岡氏は最後に「HPE GreenLakeプラットフォームをマルチクラウド・ベンダー対応が可能なAIOpsによるIT管理SaaSと、サステナビリティダッシュボードの提供で強化していく。また、ハイブリッドクラウドを支援するIaaSでは、さまざまな企業でAIを活用するためのスーパーコンピューティングによるクラウドサービスと、ハイブリッドクラウド前提で設計されたプライベートクラウドを提供する。そして、エコシステムの拡大でハイブリッドクラウドの選択肢を提供するとともに、エッジからクラウドまでをカバーするクラウドサービスを拡充している」と締めくくった。